2001 Fiscal Year Annual Research Report
ウィリアム・フォークナーのハリウッドでの著作と同時代作家との関連
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13610593
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大和田 英子 法政大学, 工学部, 助教授 (00203951)
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Keywords | ウィリアム・フォークナー / ハワード・ホークス / ハリウッド / "Dreadful Hollow" / "Sutter's Gold" / Bruce Kawin / カリブ海域 / 映画脚本 |
Research Abstract |
本研究では、ウィリアム・フォークナーが、1930年代から1940年代にかけて、断続的にカリフォルニア州ハリウッドでの映画製作に脚本家として関わっていた時代の足跡および関連作品、同時代作家などを広い文脈で捉えて、文学作品と社会状況、および大衆芸術からの影響関係を考察するものである。まず、基礎資料としては、すでに出版され、キャノンとして確定しているフォークナー文学のみならず、ブリガム・ヤング大学(アメリカ合衆国ユタ州)に所蔵されている、ハワード・ホークスに関わる文書を現地調査し、コピーライトに抵触するためゼロックス・コピーが禁じられている文書を一部筆写し、検討を加えた。そのひとつが、"Dreadful Hollow"である。その存在は、研究者には知られていたが、Bruce Kawinが精査し、研究書を出して以降、比較研究する機会がほとんど閉ざされていた。Bruce Kawin本人からの情報を元に、プリガム・ヤング大学の許可を受け、ハワード・ホークスが寄贈した文書類を調査した結果、"Dreadful Hollow"以外にも、ウィリナム・フォークナーが、ホークスと共に共同執筆したと考えられている"Sutter's Gold"のタイプスクリプトを、筆写し、その概要を入手することができた。"Dreadful Hollow"および "Sutter's Gold"には、カリブ海域諸国とアメリカ合衆国との政治的・社会的影響関係がはっきりと明示されているというよりは、恐怖、あるいは、暗黒の地、呪い、といった、カリブ海域にまつわるイメージが、増大され、誇張されて、投影されている。映画の脚本ではそうした場所の醸し出す雰囲気を利用することで、逆に、アメリカという政治組織体の抑圧された無意識に埋没したカリブ海域への真情が読みとれる。同時代作家にもカリプ海域に目を向けた作家が少なくなく、また、ホークスと共に、エイゼンシュテインも、カリブ、及びアメリカの人種差別問題に目を向けていたことを考え合わせると、1930年代のアメリカ文学が、単に、大恐慌の影響を受け、モダニズムを開花させた、というだけでは終わらないということが浮き彫りになる。今年度は、"Dreadful Hollow"及び"Sutter's Gold"へ呼応するカリブ海域との関連で、1930年代を彷佛とさせるフォークナーの短編、'A Rose for Emily'の文化的コンテキストを、人種との関わりから掘り下げて論じるところまで、研究を発展させた。来年度は、実際に、ハリウッドで、フォークナーと同時期に脚本に関わっていたGuy Endoreなどの著作にもあたる予定である。
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Research Products
(1 results)