2002 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカの奴隷体験記(スレイブ・ナラティブ)と黒人文学
Project/Area Number |
13610595
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Research Institution | RIKKYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小林 憲二 立教大学, 文学部, 教授 (90092056)
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Keywords | スレイブ・ナラティブ / 黒人文学 / 奴隷制 / アメリカン・ルネッサンス / 文化と帝国主義 / 明白な運命 / カリブ海文化 / キャノンの見直し |
Research Abstract |
(1)本年度は三つの研究会での三つの研究発表を中心に表記の研究活動に取り組んだ。 イ.第三回「カリブ文化・文学研究集会」(2002年5月12日)での研究発表(「アメリカとカリブと奴隷制」) ロ.新英米文学会第33回大会のシンポジウム「Uncle Tom's Cabinと同時代作家をめぐって」(2002年8月24・25日)でのコメンテーター ハ.20世紀文学研究科例会(2003年1月25日)での研究発表(「アメリカン・ルネッサンス」再検討-サイード『文化と帝国主義に導かれて」) (2)具体的成果は「スレイヴ・ナラティヴとは何か」という副題でおこなった「(1)のイ.」が最も詳しいので、それにそくして以下にまとめる。 イ.南北戦争前のアメリカ、とりわけ南部奴隷制を抱え込んでいた時期のアメリカにおける文化、とりわけ文学表現などに注目したとき、「カリブ海」のイメージがさまざまな作家のさまざまな作品の中に入り込んでいる。 ロ.たとえばBenjamin Franklin, Autobiography (1818)やJames Fenimore Cooper, The Last of the Mohicans (1826)など。他にはHawthorneの妻Sophiaのキューバ滞在日記なども面白い観察記録となっている。 ハ.またF.Douglassと同時代の黒人指導者M.Delanyも1850年代に、白人によるリベリア殖民政策への対抗措置として、カリブ海英語圏諸島への移住計画をうちだしている。 ニ.こうした動きとの関連で、19世紀のアメリカ文学を概観したとき、キャノン化された「アメリカン・ルネッサンス」見直しの時期にきている。メルヴィルやホーソンなどの白人男性作家ばかりでなく、ハリエット・ビーチャー・ストウやF・ダグラスなどにも十分目配りすべき。 ホ.偏狭なナショナリズムと非人間的な奴隷制を根源的に批判する観点が見出せる。
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Research Products
(2 results)