2002 Fiscal Year Annual Research Report
J・フィッシャルトとその時代―文化史的・文体統計論的多重解析の試み
Project/Area Number |
13610622
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
新井 皓士 一橋大学, 大学院・言語社会研究科, 教授 (60022117)
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Keywords | フィッシャルト(Fischart) / 柿本人麿(人麻呂) / 原日本語 / 計量言語学 / 16世紀ドイツ言語文学 / 作者問題 / 主成分分析 / 文長対数正規分布 |
Research Abstract |
本年度は、一橋大学情報処理センター長としてセンター改組、及び「国松文庫」整理という二つの事業の傍ら、年度前半は確率論に基く計量言語学的方法論の検討と応用、年度後半は、16世紀ドイツ言語文化史の潮流に沿った資料整備検討とその統計学的分析を行ない、年度末にドイツ・ベルリーンに出張し、関連研究資料収集に専念した。前者に関する直接の成果としては、弥生時代日本語に関する大野仮説、すなわちタミル語クレオール説は、印欧語等に関しては言語学上の定説と一致する結果をえられる方法、即ち基礎語彙と確率論(二項分布)に基く推計学的方法によって検証する限り、大野仮説は成り立ちがたいことを立証したものである(タミル語圏に隣接するインド亜大陸諸言語についてはなお研究を継続中)。論文の上代日本語の周辺-計量言語学余滴-は、この結果とともに、上代文学に関する別種の仮説を別の統計的方法によって検討した結果を中間報告の形で掲載しているが、これは論文の「人まろが歌」-ひとつの統計的検証の試み-において、集中的に論証している。すなわち古今和歌集に「人まろが歌」として収録されている7首は、柿本人麿の作とは認めがたいことを、相互相関、カイ二乗検定、主成分分析等の統計的手法によって検証したものであるが、資料としては万葉集や拾遺集まで使用し、人麿歌に関する新体・古体の最近の研究成果も参照している。年度後半の研究にあっては、作者問題の解決に極めて有効な手法としての主成分分析や判別分析に加え、数量化III類やコレスポンデンス・アナリシスの手法を、基礎資料としてのルター文書に応用してその効力を計るとともに、散文文長が対数正規分布に従うことを確認。またフィッシャルトと同時代の16世紀言語資料文書(ツィンメルン年代記、ヴィックラム作品等)を統計的分析に適した資料として整備し、逐次、探索的統計分析を積み重ねている。ベルリーン出張では特に往時のユグノー関係資料に注目したが、これはフィッシャルトの思想的傾向との関連による。
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Research Products
(2 results)