2002 Fiscal Year Annual Research Report
インド中世後期の文学理論とりわけラサ論の展開にみる古典サンスクリット文学の伝統
Project/Area Number |
13610640
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
水野 善文 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (80200020)
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Keywords | ラサ論 / ケーシャヴ・ダース / ラスィク・プリヤー / サンスクリット / ブラジ・バーシャー |
Research Abstract |
今年度も昨年度に引き続き、インド中世後期の、ヒンディー語とりわけブラジ・バーシャー方言によって文学理論を著した詩論家ケーシャヴ・ダースの諸作品のうち、ラサ論を扱う『ラスィク・プリヤー』のテクスト分析を中心に研究を進めた。 複数の写本に基づいていると思われる刊本ヴィシュヴァナータプラサード・ミシュラ編の『ケーシャヴ・グランターワリー(ケーシャヴ作品集)』を底本とし、これをパソコン上に電子データ化する一方、内容についても読解作業を進めた。その過程において、テクスト伝承の不備に起因する理解不能箇所が複数箇所みつかった。こうした部分は、他の伝本を参照する必要がある。その点、昨年度末、連合王国ロンドンの大英図書館にて入手してきた写本マイクロフイルムが有効となる。ただ、今年度は、そちらの中身まで吟味するには至っていない。出来得れば、入手済みの写本に加えて、この際インドの諸研究機関に所蔵されている、重要性の高い写本も入手したいと考えている。これらの作業は、来年度の課題としたい。 一方、時代的に先行したサンスクリットおよび諸近代語による、数多存在する詩論書の中から、ラサ論を扱っているものを調査し、これらとケーシャヴの記述とを比較する作業を進めるべく、原典テクスト、および関連研究書の収集を試みた。網羅的に調査したいという意図とは裏腹に、この作業には膨大な時間を要し、進度ははかばかしくない。残すところ後1年の研究期間でどの程度進められるか、状況によっては計画の見直しをおこない、必要最小限の要素抽出にとどまるかもしれない。いずれにしても、詩論を中心としたインド文学史の流れを、可能な限り鮮明にしたい。
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