2004 Fiscal Year Annual Research Report
現代ギリシァ詩研究-セフェリス、エリティス、ソロモスを中心に-
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13610644
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
石田 啓 東北学院大学, 教養学部, 教授 (00203000)
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Keywords | セフェリス / エリティス / サッポー / 古代ギリシァ詩 / 現代ギリシァ詩 / リリシズム / ホメロス / 伝統 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は主に、3点の雑誌論文(日本語、英語、ギリシァ語各1点)と[図書]項目記載の『続現代ギリシァ語俳句アンソロジー』序文(ギリシァ語)として作成した「詩的対話-芭蕉、セフェリス、ホメロス-」から成る。 論文「ミュティレーネの月-エリティスとサッポー-」は、エリティスの詩全体及び散文、特に『アニフタ・ハルティア』(開かれた書)に見出せるサッポー及び断片言及、暗示、影響を調査し、その意味を考察した。また、エリティスによるサッポー断片翻訳集『サッポー-再構成と翻訳-』に見られる配列から、エリティスのサッポー観を祝婚歌伝統の点から再考察した。 「詩的対話-芭蕉、セフェリス、ホメロス-」では、特に『オデュッセイア』11巻のネキュイア(冥府訪問)の現代的意義の再考察と言える「ミシストリマ」(神話物語)と「16の俳句」との共通或いは類似語彙の点から、セフェリスの俳句を通しての芭蕉とホメロスの詩的対話として現代ギリシァ語俳句を論じた。 また、ギリシァ的伝統の継続性という立場から、現代ギリシァ詩研究を古典研究の一部というよりも、むしろ新たなるギリシァ学として提唱することを目的とする本研究の根底には、プリズムとして日本の文化、特に古典詩歌伝統の現在的意義を、ギリシァ的伝統との関連に基づいて問い直すという視点がある。 論文'Lyrical Tradition in Japanese Classical Poetry and its Significance'では、サッポーに遡るリリシズムの今日的重要性の観点から、古典和歌伝統と技法、特に本歌取りの象徴性を論じた。更に日本詩歌伝統に見られる抒情性の普遍的価値の指摘という立場から、北原白秋の抒情詩を「ほろ苦い刺繍」というタイトルで、美の叙情的把握の西洋と東洋との相違を述べる序文と共に翻案した。この試みには、現代ギリシァ詩という詩歌伝統への調和的波紋を意図した詩的言語によるささやかな問題提起が込められている。
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Research Products
(4 results)