2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本語諸方言の子音音素における近似統合(near-merger)の基礎的研究
Project/Area Number |
13610647
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大野 眞男 岩手大学, 教育学部, 教授 (30160584)
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Keywords | 音韻体系 / 音韻変化 / 音素統合 / 近似統合 / 琉球方言 / 奄美方言 |
Research Abstract |
本年度においては、平成13年度の実績を踏まえて下記の3点について標記研究を遂行した。 1)既存の音声資料の整理と音響分析的手法による分析 2)新たな臨地調査による音声資料の補完及び分析 3)近似統合現象に関する仮説作りと仮説の検証 1)においては、東北方言における閉鎖系列無声子音の有声化、南琉球大神方言における閉鎖系列有声子音の無声化、高知方言における四つ仮名音声の消失過程、琉球諸方言における高母音化に伴う新たな子音対立、などを素材として、ディジタル媒体による音声資料化をはかった。また、前年度の臨地調査結果の分析を踏まえて「奄美方言における中舌母音の歴史的重層性」『国語学研究41』を執筆した。 2)においては、鹿児島県大島郡瀬戸内町の与路島を中心に奄美大島方言域南部の周辺方言の音韻体系を臨地調査し、併せてDATによるディジタル録音を行った。これにより、北部奄美方言音韻の地理的多様性をデータ化することができ、これに基づき近似統合現象を含めた音韻変化に歴史的説明を与えることが可能となった。 3)においては、上記1)を踏まえて近似統合の音変化における一般的位置づけに関する歴史的説明の仮説を構築するとともに、上記2)を踏まえて琉球方言における母音推移にともなう子音統合及び近似統合現象の歴史的プロセスを詳細に解明することができた。現在、関連学会での発表に向けて準備中である。
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