2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610651
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田口 善久 千葉大学, 文学部, 助教授 (10291303)
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Keywords | ミャオ・ヤオ諸語 / 歴史言語学 / 東アジア諸語 |
Research Abstract |
本研究は、苗瑶(ミャオ・ヤオ)諸語を中心として、その近隣に話される少数民族言語を比較対照し、苗瑶諸語の祖語の音節構造、語の形態構造を解明する手がかりを得ようとするものである。 本年度は、前年度に行った羅泊河苗語(西部方言羅泊河次方言)の名詞の形態と名詞句の構造の分析をもとにし、他の苗瑶諸語との比較研究を中心に研究を行った。さらに、その周囲に話される少数民族諸言語のデータの整理を行った。この際には、研究代表者自身が調査を行い、初めてその資料を公開したパナ語についても、比較研究の対象に加えている。 祖語の音節構造や形態論的構造をさぐるために、いくつかの形態論的手段のうち、特に接頭辞付加に着目し比較研究を行った。接頭辞が重要なのは、形態論的手段に乏しい苗瑶諸語において、語よりも小さい成分として分析できる数少ない要素であるからである。まず、苗瑶諸語の諸言語・方言の名詞の接頭辞のデータベースを作成した。これに基づいて、(1)接頭辞がどのような地理的分布を見せているか、(2)音韻対応をもとに、対応する接頭辞があるか、(3)機能の点でどのような共通点が見出せるか、という問題点について考察を行った。その結論は以下の通りである。(1)接頭辞の分布は地理的には北西に濃く、南東に薄い分布をしている。(2)^*q[a]-という接頭辞は言語を超えて見られることから、祖語レベルに遡る可能性がある。(3)名詞を分類する機能があるが、それは類別詞の分類の仕方とは明らかに異なるものであり、類別詞がmetatypyによって漢語からもたらされたと仮定すると、本来苗瑶諸語においては別の名詞分類の形態手段があった可能性を考えるべきである。その形式の名残が現在の接頭辞と考えられるのである。 さらに対象を広げて考察を進めるべきであるが、データの不足が現状での研究の制約になっていることは否めない。今後の調査とその資料公開が待たれる。なお、以上の研究は成果報告書に記載してある。
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