2003 Fiscal Year Annual Research Report
中期蒙古語における外来的要素が言語構造に及ぼした影響の研究
Project/Area Number |
13610659
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
樋口 康一 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20156574)
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Keywords | モンゴル語 / 言語接触 / 文殊師利最勝名経 / 法華経 |
Research Abstract |
モンゴル語仏典には、翻訳当時の複雑な言語事情を反映して、原典の言語であるサンスクリットやチベット語のみならず、漢語やウイグル語に由来する外来形式が多数保存されていることは、夙に指摘されている事実である。本研究は、いくつかの仏典を対象としてとりあげその行文を子細に検討することを通じて、その実相を解明し、外来形式がモンゴル語自体の言語構造に及ぼした影響を明らかにして、モンゴル語学、とりわけ中期モンゴル語における言語変化の実態解明に迫るとともに、ひろく言語接触と言語変容に関わる一般則の確立を目的とするものであった。具体的にとりあげた仏典は『文殊師利最勝名経』と『法華経』である。前者はトルファン出土文書中にも断片があり、原翻訳の成立は14世紀にさかのぼり得ることが確実な仏典の一つであり、また、後者は著名ではあるが、その行文の詳細は未研究である。これらについて、現在入手可能な全テキストを校訂し、定本を編纂した上で、その行文中に見いだされる外来形式の実相を解明する作業を遂行した。成果の一端は、一昨年5月にロシア連邦共和国カルムック自治共和国で開催された「アユカ・ハーン生誕360周年記念国際学術集会」において発表するとともに、それに基づいた討論を行い、新たな知見を得た。さらに、他の仏典から得られた知見を加味して、同じく11月に開催された国際シンポジウム「モンゴルの出版文化」において発表し、同学の士の批判を仰ぎ、討議を経て、新たな知見を得た。いずれも現在投稿中である。
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