Research Abstract |
本研究課題の目的は来間島方言の体系記述を行い,包括的で,正確な記録をデジタル録音・録画として保存することである。本年度の研究実施計画は,1.体系調査に重点を置き記録項目の選定のための基礎的資料を得ること。2.記録のための話者の協力確保,記録環境の整備を調査地で行う,の2点である。 本年度の臨地調査では,下地町教育委員会等の協力を得て,60代から80代までの男女,計8名に対して面接・聞き取り調査を行った。これにより,方言調査に対する理解を得,調査協力体制を得ることができた。来間島の現状は,人口の減少,65歳以上の人口比の高さ,共通語化の進行にさらされており,時間が経てば,方言は消滅してしまう。早期の調査分析・記録の必要性が改めて明らかとなった。また,今回の調査で分かった特徴的な点は次の通り。 1.音声上の特徴としては,宮古方言の古い姿である唇歯音,摩擦的噪音を伴う中舌狭母音などが,時にゆるみはするが保たれていることが確認できた。 2.アクセントについては,概略統合一型であることが確認できた。 3.文法のうち,(1)活用形では,命令形語尾は-e,-roと,-i,-ruの両方が観察された。個人差があり,個人の中でもゆれている場合があった。例:jumi〜jume(読め),idiru〜idiro(出ろ),(2)名詞と対格の助詞[u],とりたて助詞[ja]との融合は,平良市方言に似ているが口蓋化を起こす点が異なることが明らかになった(例:ピヂウ<肘>,ピッチュ<肘を>,ピッチャ<肘は>,*平良市方言では,ピッツ,ピッツァとなる)。
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