2001 Fiscal Year Annual Research Report
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13610672
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Research Institution | Ritsumeikan Asia Pacific University |
Principal Investigator |
吉本 智慧子 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (70331105)
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Keywords | 契丹大小字 / 女真文字 / 表音文字 / 表意文字 / 外部転換型 / 内部転換型 / 女真文字書 / 契丹文石刻 |
Research Abstract |
契丹文字と女真文字はいずれも表音文字と表意文字とが並存する文字体系であり、表音文字の比重が表意文字よりはるかに多い(契丹小字においてはことにそうである)。このため、本研究を進めるための第一段階として、表音文字の比較研究に重点を置いた。論文「漢字文化圏表音文字の発生と発展」は、契丹文字と女真文字の表音文字を対象に、表音文字が音節文字ないし音素文字に向かって発展する過程を検討した。漢字の子系統の文字には、多少なりとも表音の成分が存在する。その中で表音成分が文字において独立した音節単位として出現し、表意文字から表音文字への発展過程を明示するものは、契丹大小字と女真文字である。表意を主とし表音を従とする契丹大字と、表音を主とし表意を従とする契丹小字の間の外部転換型の継承関係は、女真文字では表意文字が徐々に表音文字を後続させ、あるいは複数の表音文字が一個の表意文字に交代するという内部転換型の推移関係として表れる。この二類型の表音文字の発生方式は、全く同じというわけではないが、その目的は同じであり、いずれも漢字の表意の性質の束縛を離脱することを企図し、自民族の言語に適合した文字たる表音文字の方向に向かって発展するものである。 契丹大小字や女真文字の碑文・石刻は、近年不断に新しく発見されており、これらの新資料には少なからぬ従来未見の文字や単語が出現している。これら従来未見の文字や単語を解読するための主要な条件としては、契丹大小字と中後期女真文字の間に位置する重要文献たる『女真文字書』を深く研究することが求められる。この字書は大量の原型の契丹大小字を含むが、これらは中後期の女真文字では多少なりとも面目を改めている。論文「『女真文字書』的年代及其底本」「『女真文字書』的体例及其与『女真訳語』之関係」は、上述の問題に関わる一系列の研究である。この基礎に立って進められた契丹文字と女真文字の表音の方式・表音の性質・文字の形態及び契丹文字・女真文字と漢字との関係などの諸問題に関する研究成果は、単行本『愛新覚羅氏三代阿爾泰学論集』に収録した。女真文字に関わる総合的全面的研究の成果は、単行本『女真語言文字新研究』として出版した。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 愛新覚羅鳥拉熙春: "金代女真語より見た中古東北アジア地区の民族接触"立命館文学. 569号. 1-30 (2001)
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[Publications] 愛新覚羅鳥拉熙春: "漢字文化圏表音文字の発生と発展"立命館文学. 570号. 25-60 (2001)
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[Publications] 愛新覚羅鳥拉熙春: "明代女真語的輔音係統"立命館言語文化研究. 13巻1号. 193-260 (2001)
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[Publications] 愛新覚羅鳥拉熙春: "『女真文字書』的年代及其底本"立命館言語文化研究. 13巻2号. 141-152 (2001)
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[Publications] 愛新覚羅鳥拉熙春: "『女真文字書』的体例及其与『女真訳語』之関係"碑林集刊. 8巻. 175-198 (2002)
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[Publications] 愛新覚羅鳥拉熙春: "女真語言文字新研究"遼寧民族出版社. 328 (2002)
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[Publications] 愛新覚羅鳥拉熙春 他: "愛新覚羅氏三代阿爾泰学論集"遼寧民族出版社. 435 (2002)
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[Publications] 愛新覚羅鳥拉熙春 他: "天遊閣集"遼寧民族出版社. 442 (2002)