2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610687
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小川 正廣 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (40127064)
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Keywords | 民話 / 民間伝承 / 西洋古典 / ローマ / ウェルギリウス / オウィディウス |
Research Abstract |
前年度に引き続き、ローマの叙事詩作家ウェルギリウスの作品に関して、その成立基盤となった古代の民間伝承を総合的に考察した。そのため、古代イタリアの民間伝承に関する資料を収集し検討した。資料の収集と分析については、以下の点に重点を置いて行なった。 (1)叙事詩『アエネイス』を創作する際ウェルギリウスはイタリア各地に伝わる古い都市建設伝承や土着の英雄に関する民話、および宗教儀礼にまつわる古来の伝承を採集・調査した。そうした研究の成果は、この作品の語りのさまざまな表現形態の中に凝縮された。叙事詩の背後にあるそうした民間伝承を取り出す際、有力な手がかりになるのは、エンニウスやナエウィウスなどの共和政期の叙事詩の研究や共和政末期の歴史家リウィウスとハリカルナッソスのディオニュシオスの研究である。したがって、まずウェルギリウスに先行するローマ建国に関する諸伝承を扱った古典文学の研究資料を電子媒体を利用して集めた。 (2)『アエネイス』の中の逸話や場面は、しばしば帝政期のオウィディウスの『変身物語』でも語られている。しかしオウィディウスは、必ずしもウェルギリウスに従っておらず、独自な民話・伝承を取り入れている場合が多い。オウィディウスの『祭暦』もまた、多くのローマ固有の民話を含む。そこで、オウィディウス関係の研究資料を収集し、それらを活用してウェルギリウスとの比較研究を進めた。 (3)古代イタリアの民話や伝承を調査するうえで、地中海周辺のローマ都市遺跡および美術の研究はきわめて有益である。また、古代イタリアの民話を考察する際、アジア・日本など他の地域の類似の話形を調査し、比較研究を行なうことも必要となった。そのため、地中海周辺のみならず、アジア地域および日本おいても現地調査と資料収集を行なった。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] 小川正廣: "古代地中海世界から21世紀へのメッセージ"ギリシア世界からローマへ-転換の諸相. 9-22 (2001)
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[Publications] 小川正廣: "ホメロスからウェルギリウスへ-「自由」の意味の転換"ギリシア世界からローマへ-転換の諸相. 189-222 (2001)
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[Publications] 小川正廣: "西洋における言葉と文字-ギリシア・ラテン語"文字をよむ. 175-182 (2002)
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[Publications] 小川正廣: "オイディプースと「宿命の子」の民話"オイディプースをめぐる悲劇作品と伝説-運命論の展開. 33-45 (2002)
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[Publications] 小川正廣: "キケローの死と二つの祖国"『キケロー選集』月報. 16. 8-15 (2002)
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[Publications] 小川正廣: "古代世界の言葉遊び"月刊『言語』. 32-2. 66-71 (2003)
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[Publications] 小川正廣: "西洋における近代古典学の成立と発達-批判的素描"科研費特定領域研究(A)「古典学の再構築」総括班研究成果報告書. (発表予定). (2003)
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[Publications] 小川正廣: "西洋古典カノン-初期ギリシアにおけるホメロスの詩の選定について"科研費特定領域研究(A)「古典学の再構築」調整班B01,研究成果報告書. (発表予定). (2003)
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[Publications] 小川正廣: "口論伝統と文字テクスト-ホメロスをめぐって"岩波講座 文学. 第1巻(発表予定). (2003)
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[Publications] 小川正廣: "他者イメージの変容-ローマ喜劇と恋愛詩における奴隷と女性"ギリシア・ローマ世界の他者. (発表予定). (2003)