2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13610690
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
日下 みどり 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (70253523)
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Keywords | サブカルチャー / 漫画評論 / 漫画文化研究 / 世界への日本文化の発信 / 香港漫画 / 台湾漫画 |
Research Abstract |
15年度にまとめた『中国漫画評論』は、現在中国・台湾で発行されている漫画に関する批評・評論文を収集・翻訳したものである。特に新聞の社説などは、今の中国政府が行っている「漫画文化政策」がよくわかるものを選んで翻訳した。これによって、外部からは判り難い、中国の文化政策の特殊性(排他的・独善的・思想教育偏重)の実態が明らかになると思われる。ようやく大衆消費文化が発達し始めた中国では、外国製のボップカルチャー(映画・音楽・マンガ・アニメ・ゲーム)の氾艦が種々の混乱をまねいており、政府がそれへの対応に苦慮しているのが、現状であるが、中でもしばしば槍玉に挙げられるのが日本のマンガである。中国政府は質・量ともに圧倒的な力を誇る日本マンガに対抗するため、漫画文化振興の一大プロジェクトをたちあげるが、結局無残な失敗に終わる。それら一連の動きが読み取れるように配置したが、この点だけをみても日本と中国の文化の質の差を読み取ることができるであろう。 『中国漫画評論』ではその他にも、台湾漫画界の専門家による漫画評論(多くは日本漫画に関するもの)を収めるが、それによって、アジアにおける日本の大衆文化(マンガ・ゲーム・アニメ・テレビドラマ・音楽)の評価の高さ、影響の根強さをうかがい知ることができるだろう。台湾では日本文化輸入禁止後も、60年代すでに日本マンガの海賊版は出回っており、青少年に支持されていた。ここで紹介した台湾漫画人(編集者・作家・出版業)の人々はその頃のマンガに魅了されて子供時代を過ごした人であり、マンガへの感性も成熟している。そのため、我々の側にも参考になる優れた評論が多いのが特徴である。 こういった外国の漫画評論をまとめて翻訳・出版する試みはわが国ではまだ極めて少なく、アジア関係では皆無といえる。そういう意味でも、これらの成果はこれからの漫画文化研究に資するところが少なくないと自負している。さらに13年から15年にかけて研究代表者が発表した論文は4本、いずれもマンガ研究関係のものである。これらの論文がアジアにおける漫画文化研究の発展に、いくばくかの貢献ができれば幸いである。これからも引き続き、韓国・マレーシアなども視野に入れた研究を続けてゆきたいと計画している。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 日下みどり: "日本漫画研究序説"韓日言語文化研究. 2. 83-98 (2001)
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[Publications] 日下みどり: "中国「新漫画」事情"比較社会文化. 8. 17-26 (2002)
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[Publications] 日下みどり: "「連環画」から「新漫画」へ"東方. 7月号. 8-12 (2003)
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[Publications] 日下みどり: "香港漫画考"比較社会文化. (印刷中。2004年3月発行予定). (2004)
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[Publications] 日下みどり: "浸画学入門"中国書店. 111 (2002)