2002 Fiscal Year Annual Research Report
ロシアとポーランドにおける司法改革の比較研究――制度的拡張と機能的不全
Project/Area Number |
13620004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小森田 秋夫 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (30103906)
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Keywords | 司法改革 / ロシア法 / ポーランド法 / 体制転換 / 違憲審査制 |
Research Abstract |
(1)ロシアの司法改革全般について、ポーランドと比較しつつ制度論的検討を行なった。 (2)2002年8〜9月に、ロシア(モスクワ)、エストニア(タルトゥ)、ポーランド(ワルシャワ)において、聴き取りおよび文献蒐集を行なった。聴き取りは、モスクワでは科学アカデミー国家と法研究所、連邦憲法裁判所、全国弁護士ギルド、タルトゥでは最高裁判所、ワルシャワでは最高裁判所、憲法法廷、市民の権利弁務官(オンブズマン)事務所において行なった。 また、モスクワでは、地区裁判所において、民事裁判および新刑事訴訟法典施行直後の刑事裁判を傍聴した。 (3)以上の結果として得ることのできた主な知見は、次とおりである。 a.市場経済化に伴なう法律家への需要の増大に対する対応が、ポーランドでは弁護士と法律顧問という2つの法律専門職の業務の棲み分けをめぐる論争と法改正という形で展開したのに対し、ロシアでは既存の弁護士会と並立する弁護士会の発生と両者の統合を図るための新弁護士法の制定という経過をたどった、という対比が明らかとなった。 b.戦後、ソ連と同型の参審制を採用したポーランドが、事件の種類に応じて制度を多様化した結果、体制転換後も一定の範囲で参審制が存続しているのに対して、すべての第一審裁判で一律に参審制を実施してきたロシアでは、その形骸化への反省から、陪審制(刑事訴訟)、専門参審制(仲裁訴訟)、職業裁判官のみによる裁判へと分化し、一般参審制は民事・刑事とも放棄された、という対比が明らかになった。 c.憲法裁判所制度を導入したロシアとポーランドでは、憲法裁と最高裁判所との関係が論点のひとつとなっているが、憲法裁判所ではなく最高裁判所に憲法部を設けたエストニアでも、共通する性格の問題が存在することが明らかとなった。
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