2001 Fiscal Year Annual Research Report
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13620009
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
神保 文夫 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20162828)
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Keywords | 近世法 / 法曹法 / 判例法 / 御仕置裁許帳 / 評定所 / 大坂町奉行所 / 八田家文書 / 京都町奉行所 |
Research Abstract |
研究実施計画に従って、各地の図書館・史料館等に架蔵されている未公刊史料を採訪調査するとともに、設備費により古書店等を通じて史料・文献類を購入し、江戸幕府及び諸藩における法実務の実態を窺うべき史料をできるだけ系統的に蒐集することに力を注いだ。具体的には、江戸、大阪、京都を中心とする江戸幕府法史料のほか、宇和島藩、徳島藩、高松藩、鳥取藩、広島藩、岡山藩、備中松山藩、福井藩、鯖江藩など主として西日本を中心とする諸藩の史料について、先例集、判例集、問答集、法曹役人の手控類、訴訟当事者の記録等を相当数蒐集することができた。これらの史料の整理と本格的な分析・検討作業は次年度以降に行う予定であるが、現時点においても既にいくつかの新知見を得ている。第一に、現在伝存するものが少ない江戸時代前期の幕府判例集である「御仕置裁許帳」の異本「新案定例」を発見したが、その序文により「御仕置裁許帳」では知り得なかった編纂の事情をある程度明らかにすることができた。第二に、評定所の民事裁判に関して訴訟当事者が書き残した「出入日記」等の記録を見出し、役所側の記録だけでは充分に知り得なかった訴訟手続の進め方や訴訟関係者の行動等について、具体的に知ることができた。第三に、大坂町奉行所における民事裁判法の変遷等を窺うことができる史料「大坂御仕置覚書」や、与力が作成・所持していた法実務書の種類や内容等を知り得る記録「八田氏所蔵公用書物目録」など、伝存するものが少ないとされる大坂町奉行所関係の良質な史料を数多く見出した(但し写真撮影が許可されず史料を現地で筆写しなければならないので、今年度はその一部を蒐集することができたに止まる)。第四に、京都町奉行所の判例集「公事留帳」及び「目安之留帳」を見出したが、これにより従来ほとんど解明されていない江戸時代前期の京都町奉行所における民事裁判の一端を明らかにすることができた。
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