2002 Fiscal Year Annual Research Report
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13620009
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
神保 文夫 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20162828)
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Keywords | 近世法 / 法曹法 / 判例法 / 天保改革 / 評定所 / 大坂町奉行所 / 八田家文書 / 京都町奉行書 |
Research Abstract |
研究実施計画に従って、今年度も各地の図書館・史料館等に架蔵されている未公刊史料を採訪調査するとともに、設備備品費により古書店等を通じて史料・文献類を購入し、江戸幕府及び諸藩における法実務の実態を窺うべき史料を蒐集することに力を注いだ。具体的には、評定所、三奉行所、大坂町奉行所、京都町奉行所などの江戸幕府法関係史料のほか、萩藩、徳島藩、高知藩、西大平藩などの諸藩の史料について、先例集、判例集、法曹役人の手控類などを多数蒐集することができた。現在これらの蒐集史料の整理・分析作業を進めつつあり、その過程でこれまでにいくつかの新知見を得ているが、主なものは以下の通りである。第一に、従来あまり利用されていなかった江戸城多聞櫓文書により、幕末(文久3年12月から慶応3年12月まで)の江戸における刑事司法の実態を統計的に示すことができた。第二に、北町奉行所に備え付けられていた敵討帳の写本を見出し、寛文10年から寛政6年までの124年間に町奉行所に帳付の手続がなされた敵討・妻敵討192件の実態を明らかにすることができた。第三に、初年度以来調査を継続している大坂町奉行所与力八田五郎左衛門家史料により、延享2年に実施された大坂町奉行所の法実務・手続慣行等に関する改革の内容等について詳細に知ることができた。第四に、天保改革の政策遂行にあたり、大坂町奉行所が江戸からの指令に対して抵抗したことの意義を明らかにし、坂本忠久氏の論文に対する書評の中で展開した。第五に、訴訟当事者が残した訴訟出府日記等数点を新たに見出し、役所側の記録だけでは窺い得ない法廷実務や訴訟関係者の行動等について具体的に知ることができた。
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