2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13620013
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
水林 彪 東京都立大学, 法学部, 教授 (70009843)
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Keywords | 民法 / 商法 / 土地法 / ボアソナード / フランス / 日本 / 中国 / 比較法 |
Research Abstract |
初年度(2001年度)の研究の一部は、「法秩序の十九世紀」(島薗進ほか編『岩波講座 近代日本の文化史』2コスモロジーの近世、岩波書店、2001年11月)に結実したが、その後、研究を進め、今年度(2002年度)は、「所有秩序の変革と法」(『日本史講座』近代、東京大学出版会、2003年刊行予定)をまとめることができた。本論文では、フランスと日本の比較法的考察を試みた。 フランスについては、(1)近代民法の成立は、共同体的土地所有の崩壊(農民層分解)と市場経済社会的な私的土地所有の成立〔土地取引の普遍化〕という社会経済史的事実を背景として成立してくること、(2)土地取引は、動産取引を規律する商法の埒外におかれ、商法とは原理を異にする民法の規律するものとされたこと、(3)農民層分解に起因する小土地所有者の零落を抑止するために、近代民法は、土地売買契約の取消・無効の法理を形成し、具体的には、レジオン(莫大損害)による土地売買取消や買戻法を実定化したこと、などを明らかにした。 これに対して、日本では、(1)土地(田畑取引)は、欧米諸列強の外圧のもとに、明治維新の変革においてて開始され、(2)欧米諸列強に追いつくべく、明治民法典・商法典の編纂過程において、土地取引も商事取引たりうるようになり、(3)民法自体も、レジオンによる土地売買契約取消制度の不採用など、商化の傾向の強いものであった。 この論文では、さらに、共同体的土地所有の崩壊(農民層分解)と市場経済社会的な私的土地所有の成立という事態に中国はどのように対応したのかを論じ、土地法を素材とする諸文明社会の法秩序の比較研究への道を切り開いた。
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