2002 Fiscal Year Annual Research Report
行政機構内部における紛争の裁判的解決に関する比較法的研究
Project/Area Number |
13620018
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村上 裕章 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20210015)
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Keywords | 司法権 / 地方自治 / 法律上の争訟 / ドイツ法 |
Research Abstract |
本研究は、行政機構内部における紛争の解決にあたって、裁判所がいかなる役割を果たすべきかという問題を、比較法的に検討するものである。本年度は主としてドイツにおける国地方自治体間の紛争解決に関する歴史的検討を行った。その結果特に次のようなことが明らかとなった。 1 第二帝政期 この時期については既に先行研究もあるが、新たな知見としては次の二つがあげられる。第一に、この時期の学説としては、(1)基礎自治体たるゲマインデを固有権を持つ主体として捉える見解、(2)国家機関として捉え、国との間の争訟を認めない見解、(3)広義の国の機関であるが、国との間に権利義務関係を認め、争訟を肯定する見解が存在する。そして、この時期を通して(3)説が有力化し、ヴァイマル期には通説となるに至る。第二に、このような学説の展開の背景としては、1870年代以降の改革により、立法上ゲマインデ等による出訴が認められたことが重要と思われる。 2 第二帝政期以前の状況 この時期については従来研究がほとんど行われておらず、日本国内で入手できる資料も限られている。そこで本年度は、別テーマで行ったドイツでの現地調査の機会を利用し、19世紀前半の国法学関係文献、並びに、特に同時期に活発に行われたゲマインデの位置づけをめぐる論争に関する文献を収集した。現在その整理を進めているが、さしあたり次のようなことが明らかになった。この時期のゲマインデに関する理解としては、(1)これを私的団体(経済団体)として理解する見解、(2)人権主体として捉える見解、(3)独立の統治主体とする見解、(4)国家機関とみる見解がある。ゲマインデの権限が強化されるにつれて(1)説は衰退し、(2)説は二月革命期に頂点に達したが、その後実証主義法学の隆盛とともに固有権説に形を変え、(3)説及び(4)説とともに次の時期に残ったと考えられる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 村上裕章: "国地方係争処理委員会と自治紛争処理委員-その法的地位を中心として-"税. 57.2. 117-128 (2002)
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[Publications] 村上裕章: "徳島県議会食糧費等情報公開訴訟上告審判決"判例評論. 524. 2-4 (2002)
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[Publications] 村上裕章: "橋本博之著・行政訴訟改革"ジュリスト. 1222. 225 (2002)