2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13620025
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
野呂 充 広島大学, 法学部, 助教授 (50263661)
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Keywords | 景観 / 美観 / ドイツ / プロイセン / 行政法 / 建築 / 条例 / 所有権 |
Research Abstract |
直接法律に基づく醜悪な建築の禁止と、より積極的な景観形成のために条例を根拠にして行われる建築規制とによって構成される、ドイツの二段階の景観保護法システムが、いかにして形成されたのかを明らかにするため、二段階システムの起源である1907年のプロイセン美観毀損法の成立過程に考察を加え、以下の諸点を明らかにした。 同法は、一方において、それまでプロイセン一般ラント法に基づいて警察官庁が行使していた、重大な美観毀損を禁止する権限を、プロイセン一般ラント法が適用されない地域にも拡張し、他方において、従来ほとんど存在しなかった、より積極的な景観保護のための建築規制を新たに導入した。そして、後者については、条例が制定されてはじめて警察官庁が規制権限を行使できるものとしたが、その理由は、地域的事情の多様性を尊重する必要性に加え、地方議会を通じて被規制者が規制に同意を与えることが所有権の制限を正当化すると考えられたことにあった。 同法の制定の原動力は、(ア)歴史的又は芸術的に重要な建造物・町並みの破壊を防ごうとする記念物保護運動、(イ)美しい国土を保護し、ひいては祖国愛を高揚させようとする郷土保護運動、(ウ)観光客の減少による経済的損失の防止についての利益であった。つまり、住環境の向上のための景観保護という観点は希薄であり、それゆえ、保護対象地域を厳選する傾向があった。しかし他方、損失補償負担を避けるために、記念物の維持ないし保存の義務を同法に規定することが見送られたため、記念物保護に限られない総合的な景観保護法への発展可能性が生まれた。
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