2002 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツの個人情報保護法制における監督システムの研究
Project/Area Number |
13620034
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山下 義昭 福岡大学, 法学部, 教授 (20239990)
|
Keywords | 個人情報 / 連邦データ保護法 / 監督官庁 / EU個人情報保護指令 / データ保護法の転換 / 現代化 / 連邦データ保護監察官 / 州データ保護監察官 |
Research Abstract |
本課題の研究計画は、ドイツのデータ保護監督制度の有用性とその限界を明らかにすることを目的として、文献研究だけでなく、実態調査を実施するというものであった。計画に従い、2001年9月にドイツ(ボン、デュッセルドルフ、ビースバーデン、)で、連邦データ保護監察官、ノルトライン=ヴェストファーレン州データ保護監察官、SCHUFA(ドイツ最大の民間信用情報機関)の法務部代表者等とのインタビューを実施した。また、2002年8月には、フライブルク大学で文献調査とデータ保護に造詣が深い公法研究者と意見交換を行った。以上のドイツ訪問及び関連文献、報告書等の調査により以下の知見を得た。 これらを列記すれば、次のとおりである。(1)ドイツでは、2001年5月に、連邦データ保護法の大改正があったが、この改正は、主として1995年のEU個人情報保護指令の転換とデータ保護法の「現代化(Modernisierung)」の要請の一部に対応するものである。この改正は、本課題の研究にも少なからぬ影響があった。この影響は公的部門の監督にも見られるが、とくに民間部門の監督システムに顕著に見られた。影響の中身について簡潔に述べれば、これまでの監督官庁による、集中的、公的コントロール(監督)から、個人データを取り扱う民間企業による、分散的、自主的コントロールへのシフトということである。この要因となった法律改正の背景には、情報通信技術の発展とそれにともなうネットワーク社会の進展等により、個人データを処理する企業等の事業者の数及び処理ずるデーダ数が著しく増大し、州単位で実施される監督官庁による十分な公的コントロールが事実上不可能に近くなったという事情があった。今回の改正はこのような事態に対応するという側面ももっている。(2)今回の改正は、デーダ保護法の「現代化」という点では不徹底である。さらなる「現代化」のために再度の連邦データ保護法の改正が必要である。この点につき、既にデータ保護法の根本的な現代化のための具体的な動き(例えば連邦内務省の委託による鑑定書の公刊)が始まっていること、その実現のためにはなお数年を要するであろうこと。(3)EUの個人情報保護の構想には、ドイツのデータ保護法の基本原則(例えば、個人情報処理の一般的禁止の原則等)が大幅に取り入れられている。その意味でドイツがEUの個人情報保護の構想においてイニシャティブをとっている。 なお、本研究によって得られた成果は、逐次、専門雑誌等で公表していく予定である。
|
Research Products
(1 results)