2003 Fiscal Year Annual Research Report
第二次世界大戦後のイギリス軍事法に関する考察-軍法会議改革の変遷を題材として-
Project/Area Number |
13620035
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
大田 肇 津山工業高等専門学校, 一般科目, 教授 (30203798)
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Keywords | イギリス / 軍隊 / 軍法会議 / 軍事法 / ヨーロッパ人権裁判所 |
Research Abstract |
イギリス軍法会議を「独立のかつ公平な裁判所」であることを否定したヨーロッパ人権裁判所判決(Morris事件、2002年2月26日)と、それ認めた貴族院判決(Spear事件、2002年6月12日)との比較検討の一環として、まず前者の判決内容を検討した。その成果が『モリス対UK事件の概要』(津山工業高等専門学校紀要第45号)である。 上記の相反する2つの判決が示された中、ヨーロッパ人権裁判所のGrieves事件をめぐる判決が注目されていたが,2003年12月16日、陸軍及び空軍の軍法会議に関しては「独立のかつ公判な裁判所」と認める一方、海軍のそれに関しては認めないという判決が下された。陸軍及び空軍の軍法会議には文民であるJudge Advocate (法務官)が関与し、その存在が「独立」「公平」を担保する上で一定の役割を果たしていると判断されてきたのに対し、海軍のそれにはJudge Advocateが関与しておらず、その「独立」「公平」が疑問視される結果となった。この判決内容は、イギリス国防省の長年の課題である3軍別々の軍事法の統一の問題とも絡んでおり、今後のイギリス国防省の対応が注目される。これらの点も視野に入れながら、Grieves事件判決の検討も引き続き行う予定である。なお同年10月1日の公開審理に、原告側弁護人のBlades弁護士及びMackenzie弁護士の計らいで、裁判所係官・政府側弁護人との事前の打ち合わせの段階から参加することができ、ストラスブールでの裁判の様子を実感することができた。居並ぶ20名近い多国籍の裁判官たち(イギリス人は1人)に、イギリス海軍の歴史と現状を説明しようと奮闘する政府側弁護人であったが、法廷内の雰囲気は2ヶ月後の判決を予想させるものであった。
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