2001 Fiscal Year Annual Research Report
我が国企業のコーポレート・ガバナンス中における監査役制度の意義とその将来展望
Project/Area Number |
13620048
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
川村 正幸 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (80092625)
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Keywords | 社外監査役 / 社外取締役 / コーポレート・ガバナンス / 監査委員会 / 株主の利益 |
Research Abstract |
本研究課題との関係では、平成13年の第153回臨時国会で成立した会社機関関係の商法改正と、本年の通常国会に提出予定の商法改正法案とが、重要な意義を有している。前者の改正は、大会社における社外監査役の増員により監査役制度の機能強化を図り、それを前提として取締役の責任軽減を可能にしようとするものであり、他方、後者は、コーポレート・ガバナンスについて、社外取締役の導入促進により、アメリカ型のコーポレート・ガバナンス・システムの利用を可能にしようとする点で特色がある。この改正では、このような新たなシステムを採用する場合に、監査役制度を廃止するものとしており、この限りで、取締役制度と監査役制度との接近が認められる。本年度の研究では、これらの改正法を検討することを通して、我が国企業のコーポレート・ガバナン中における監査役制度の意義の再考察を進めてきた。その成果の一部を雑誌『企業会計』に論文として公表する機会を得ている。 本論文では、13年の改正法は監査役制度に本来の使命を越えて過大な役割を担わせることになるのではないか、そのことは、かえって、監査役制度の将来を危うくするのではないかという危惧を指摘する。さらに、次期改正法案は、取締役会の中に社外取締役が構成員の過半数を占める監査委員会を設置すべきものとし、これを監査役と同様の機能を有するものと位置づけているが、この改正法案に関しては、それは企業の監査機能を弱めるのではないか、そのために必要な内部監査機構、公認会計士制度の信頼性向上等の基盤は未構築ではないかという問題点を指摘している。結論として、この改正法により資本市場の中で直ちに我が国企業に対する信認が生まれるわけではなく、企業の自主的改革努力こそが求められるものであること、および、我が国商法改正の在り方を検討すべき時期に来ているのではないかという点を指摘している。
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Research Products
(1 results)