2001 Fiscal Year Annual Research Report
タイ労働法における国際標準化と現実の乖離に関する研究
Project/Area Number |
13620070
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 美喜夫 立命館大学, 法学部, 教授 (70148386)
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Keywords | 労働法 / タイ労働法 / ILO条約 / グローバル化 / 国際労働基準 / 国際標準化 / 労働団体法 / 労働保護法 |
Research Abstract |
タイは創立当初からILOのメンバーであり、最初の労働法である1956年の労働法を制定するときILOの援助を受けるなど、労働法の国際標準化に早くから取り組んできた。しかし、タイはILOのコアの7条約のうち29号条約・165号条約(強制労働の廃止)と100号条約(同一報酬)を批准しているだけである。とくに、団結権に関する条約は批准していない。そして1998年に保護を強化した労働保護法の制定が行われたが、労働団体法については規制を強化する法案が政府で議論されている。このような逆の態度となる理由は、(1)労働条件保護の規制は、いわば使用者として共通の負担を背負わせるものであること、(2)劣悪な労働条件は経済全体の回復にとってもマイナスであること、(3)ILOの労働条件基準はタイで受容できるレベルであること、などによる。それに対して、労働組合の結成を促進するような立法は使用者に共通の問題となるより、かなり個別的な問題である。したがって、労働組合を保護する立法については使用者からの反対が強い。とくに、1999年末に労働側が独自の立法提案をするに至っては、国会での立法に向けた議論は困難が予想される。労使間の対立や国民の間での争点をわざわざ提供するのは経済危機の下では決して得策ではない。このように、一方で労働保護が強化されているが、他方で労働組合に対する保護は後退する可能性があるなど、タイの労働法が全体として国際基準に一致させる方向に向かっているとはいえない。グローバル化の矛盾は、まずもって労働者に対して現れるから、その解決のために労働法の改革が課題である。
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Research Products
(2 results)