2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13620080
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小川 有美 千葉大学, 法経学部, 助教授 (70241932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
網谷 龍介 神戸大学, 大学院・法学研究科, 助教授 (40251433)
中山 洋平 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 助教授 (90242065)
横田 正顕 立教大学, 法学部, 助手 (30328992)
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Keywords | 社会組織資本 / ヨーロッパ統合 / ガヴァナンス / 民主化支援 / EU |
Research Abstract |
年度途中の補助金交付決定のため,前半は各人が個別に資料・文献の調査を行い,後半に複数回の研究会を開催して集中的に意見交換を行った.その中で,各国における投票率の低下や,EUガヴァナンスの生成と各国統治構造への影響,旧社会主義圏への民主化支援の機能,といった現在のヨーロッパ政治の重要な問題を理解する上で,社会組織資本の視角が有用であることが確認された.具体的には,以下のような点が明らかになった. 1.各国における社会組織資本それ自体の様態と,それが公共空間に占める位置を比較する上で,歴史的な幾つかの分岐点に着目することが有用であること.フランスにおいては19世紀末から20世紀前半にかけて,教会階統制の平信徒運動への警戒と,官僚制を通じた媒介回路の構築という国家の戦略のため,カトリック運動の組織化が行われなかった.この時期の組織化の逸機が組織されたサブカルチュアの不在にとって決定的であった. 2.上述のような各国ごとの構造が,現在のヨーロッパにおいては変容を迫られている.EUレヴェルの政策形成においては,古典的主権国家のような決定と執行というモデルを取り得ないために,「ソフト」な新しいガヴァナンスが模索されている.これは一面では各国の社会組織資本のインフラに依存するものであり,各国の国家・社会関係とEUガヴァナンスの整合性という問題が生じる. 3.他面で,ヨーロッパ統合や旧東欧への民主化支援は,「横から」の入力として,国家・社会関係に影響する.この点は,南欧諸国や旧東欧など,EU加盟や支援が民主政の樹立と時期的に不可分の社会ではより重要な意味を持つ.そこでは,社会組織資本のありかたそれ自体が,資金,アイディアその他の点で「横から」の様々な入力に依存している.
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[Publications] OGAWA, Ariyoshi: "The Building of Civil Society by'Core'Europe?"Dzemal Sokolovic and Florian Bieber(eds.),Reconstructing Multiethnic Societies(Aldershot:Ashgate). 135-144 (2001)
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[Publications] 小川有美: "北欧諸国民とEU統合-社会の亀裂と国際的・国内的代表制度"NIRA政策研究. 14(12). 29-33 (2001)
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[Publications] 中山洋平: "例外としてのフランス:なぜキリスト教民主主義政党は根付かなかったのか"日本政治学会編 3つのデモクラシー-自由民主主義・社会民主主義・キリスト教民主主義-(岩波書店). 33-51 (2002)
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[Publications] 網谷龍介: "ヨーロッパにおけるガヴァナンスの生成と民主政の困難-調整問題の視角から-"神戸法学雑誌. 51(4). 1-39 (2002)