2002 Fiscal Year Annual Research Report
東ティモールの国家建設・国民統合問題:多エスニック国家マレーシアとの比較研究
Project/Area Number |
13620093
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
山田 満 埼玉大学, 教養学部, 助教授 (50279303)
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Keywords | 東ティモール / 国民統合 / 国家建設 / 開発政策 / 教育政策 / 平和構築 / 言語問題 / エスニシティ |
Research Abstract |
東ティモールは2002年5月20日に191番目の独立国になった。とはいえ、国連開発計画(UNDP)の『人間開発報告書』(2002年度版)では、人口の41%が貧困ラインを割る1日55セント以下で生活し、平均余命が56.7歳、成人識字率が43%、一人当たりのGDPが478ドル(購買力平価で算出した額)で、本研究の比較対象とするASEAN諸国、特に後発の旧インドシナ諸国に比べても極めて低い数字を示している。同報告書ではアジアでもっとも貧困な国家として報告されている。 研究代表者は、平成14年度国際交流基金の派遣フェローシップ助成を得て、約3カ月間、東ティモールに滞在した。その分、本研究費補助金を他の有用な備品の購入などに充当できた。東ティモールの現状は、独立を果たしたことでいっそう困難な状況下にある。それは、国連暫定統治を終えたことで、国際機関などが、投下する資本が急減し、経済悪化が進むと同時に、雇用環境もたいへん厳しい状況になっているからである。東ティモールの抱えている諸問題を以下のようにまとめられる。 第1に実体経済に合致しない米国ドル通貨の採用の歪が、国連暫定統治後急激に顕在化している。第2に、経済不況がいっそう雇用問題を深刻化させている。特に、元兵士の雇用問題、若い世代の雇用問題が政治社会不安を引き起こしている。第3に、ポルトガル語公用語化で、まず若い世代から大きな不満を引き起こしている。次に小・中学校での教育現場でも混乱を引き起こしている。 このように、東ティモールの国家建設・国民統合問題は独立後大きな岐路に直面しているといえよう。次年度はさらに上記ような諸問題がどのような形で展開していくのかを引き続き調査したい。
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Research Products
(2 results)