2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13620094
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
谷 聖美 岡山大学, 法学部, 教授 (40127569)
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Keywords | 政党システム / 小選挙区制 / デュヴェルジェの法則 / 新制度論 / 一党優位制 / 五五年体制 / 選挙研究 / 政党政治 |
Research Abstract |
本研究の主たる目的は、比例代表制をともなった小選挙区制という選挙制度の導入が、日本における政党間の競争をどのように変え、また、そのことによって日本の政党システムがどのように変化しつつあるのかを分析することである。本研究の特色は、マクロな、全国規模でのサーベイリサーチなどによるのではなく、なるべく選挙区レベルでのミクロな分析を行い、地域レベルでの動向をいわば積み上げることを通じて全国的な変化を占おうとするところにある。これは、小選挙区制度が2大政党制を導くという大方の判断の根底にあるデュヴェルジェの法則が、実は個々の選挙区のレベルではそれなりの妥当性をもっているとしても、そのことが自動的に全国レベルでも妥当することにはならないのではないかという私なりの疑問によるものである。 このデュヴェルジェの法則の妥当性を検証するために、本年度、一つには典型的な小選挙区制の国・イギリスに行って、ここ数回の総選挙データを収集した。日本では通常、イギリスを、2大政党が教科書的に政権交代を繰り返す模範的な議院内閣制の国と捉える考え方が有力で、それが中選挙区制を廃して日本にも小選挙区制を取り入れる大きな根拠となった。しかし、近年のイギリスでは、第3党の自由民主党が台頭してきており、選挙区レベルでは3党三つどもえの競争が激化していることも多いということが収集した資料から明らかになった。イギリスに関する分析は来年度さらにすすめなければならないが、この発見は、日本における小選挙区制の2大政党化圧力を考える際にも大いに参考になるだろう。 その日本については、過去2回の総選挙について、有権者総数、投票率、各侯補者の得票数といったデータを300選挙区ごとにすべて収集し、エクセル形式のファイルにまとめた。これによって、選挙区ごとの競争の度合いを指標化することが可能になった。今後、来年度にかけて、このデータを見ながら選挙区レベルでの政党間の競争状況を分析する作業を行い、それをふまえて全国的な傾向を明らかにすることによって、日本の政党システムがどのように変化しつつあるのかを占うことができるようになると考えられる。但し、選挙データ以外の個別選挙区に関する資料の収集は思うようにはかどっていない。来年度はこの点に関する遅れを取り戻したいと考えている。
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