2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13620094
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Research Institution | OKAYAMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
谷 聖美 岡山大学, 法学部, 教授 (40127569)
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Keywords | 政党システム / 小選挙区制 / デュヴェルジェの法則 / 新制度論 / 一党優位制 / 五五年体制 / 選挙研究 / 政党政治 |
Research Abstract |
本研究の主たる目的は、比例代表制をともなった小選挙区制という選挙制度の導入が、日本における政党間の競争をどのように変え、また、そのことによって日本の政党システムがどのように変化しつつあるのかを分析することである。本研究の特色は、マクロな、全国規模でのサーベイリサーチなどによるのではなく、なるべく選挙区レベルでのミクロな分析を行い、地域レベルでの動向をいわば積み上げることを通じて全国的な変化を占おうとするところにある。これは、小選挙区制度が2大政党制を導くという大方の判断の根底にあるデュヴェルジェの法則が、実は個々の選挙区のレベルではそれなりの妥当性をもっているとしても、そのことが自動的に全国レベルでも妥当することにはならないのではないかという問題意識に基づいている。 そこで、本研究においては、94年に法制化された小選挙区制比例代表併用制という新しい選挙制度のもとで行われた2つの総選挙について、有権者総数、投票率、各候補者の得票数といったデータを300選挙区ごとにすべて収集し、エクセル形式のファイルにまとめた。そして、選挙区ごとの競争の度合いや各党当選者の得票状況を分析し、この10年間の経験から日本の政党システムがどのような方向に向かっているのかを、アグリゲート・データの加工という手法を使って考察した。 また、小選挙区制がもっといわれる2大政党化圧力について国際的な比較研究を通じてより精密に議論するために、日本とほぼ同時期に併用制(混合制)を採用したイタリア、小選挙区制を維持しているにもかかわらず多党制化の傾向を見せているカナダとイギリス(イギリスは3大政党化)、さらに、これまた日本と同時期に選挙制度を一新し、小選挙区制から小選挙区比例代表並立制へと制度を変えたニュージーランドの合計4カ国についても、それらの国の総選挙に表れた傾向を分析した。 その結果、小選挙区制は確かに2大政党制化圧力を有するものの、それは従来考えられていたほど強いものではなく、制度改革を引き起こした原因、その時点での政党システムの動揺度(安定度)、個々の選挙区をターゲットにした各党の選挙戦術、地域政党の有無(そしてそれがある場合にはその数や大きさ)、各政党の凝集力(あるいはその弱さ)など、多様な要因が政党システムのあり方に影響を与えることが明らかとなってきた。日本の場合も、小選挙区制の導入は必ずしも2大政党化、あるいは一部でいわれていた自民党の1党優位制復活をストレートに導くものではなく、この国の政党システムはまだ流動的状態にあるとことが指摘された。
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Research Products
(1 results)