2003 Fiscal Year Annual Research Report
欧州における危機管理の発展をめぐる研究-NATO,EU,OSCEを事例として-
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13620103
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
植田 隆子 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10138620)
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Keywords | 欧州 / EU / NATO / OSCE / 危機管理 / 紛争防止 / 安全保障 / バルカン |
Research Abstract |
1 欧州連合による軍事的・非軍事的危機管理が2003年に実動段階に入り、急速に発展をみせたため、その実態と課題を精査した論文「欧州連合(EU)の軍事的・非軍事的危機管理」を発表した。同様に、欧州連合による紛争の未然防止のための体系的かつ包括的な取り組みが発展してきたため、これを概観した論文「欧州連合(EU)の紛争防止」を発表した(いずれも本実績報告書の研究発表に記載)。 2 欧州連合の非軍事的危機管理であるEU警察ミッションはボスニア=ヘルツェゴヴィナにおいて国家レベルの警察組織創設や組織犯罪への取り組みに成果を出しつつある。最初の軍事的危機管理である、マケドニアにおける「コンコルディア」は12月に任務を完了し、作戦名「プロクシマ」という警察ミッションがこれに代わった。コンコルディアがNATOの支援・協力枠組みに基づく活動であったのに対し、EU独自作戦として「アルテミス」がコンゴ共和国の北東部で人道的破綻に対する安定化のために2003年6月に投入された。国連の平和維持部隊が増強されるまでの短期間、フランスを主事国として任務を9月1日まで遂行した。 3 NATOはアフガニスタンのISAF(国際治安支援部隊)の作戦を組織として担当することになり、イラクについてもポーランドの担当区域について技術的支援を与え、欧州域外の作戦が主要任務となった。ボスニアのSFORもEUが2004年中に引き継ぐことになっている。EUは将来の加盟対象国の安定化を任務とする政策をとっている。 4 OSCEはEUの上記政策により、非軍事的危機管理および紛争防止の任務の中心をバルカンから中央アジアに移し、中央アジア諸国で警察改革の支援を展開している。 5 上記3組織ともテロとの闘いや、人身売買、麻薬・武器の不法取引という新しい脅威への対処のため、バルカンおよび中央アジア、コーカサス方面の国境管理を重要な任務として位置づけるようになった。 6 2003年を通じて、EU, OSCE, NATO,国連間の危機管理をめぐる協力関係が増大した。
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[Publications] 植田隆子: "欧州連合(EU)の軍事的・非軍事的危機管理-欧州の地域的国際組織による国際平和維持活動の構造変動-"国際法外交雑誌(国際法学会編). 102巻3号. 92-110 (2003)
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[Publications] 植田隆子: "欧州連合(EU)の紛争防止"ヨーロッパ研究(東京大学大学院総合文化研究科・教養学部 ドイツ・ヨーロッパ研究室). 3号. 127-139 (2004)