2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13630002
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部, 助教授 (60203874)
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Keywords | 持続可能な発展 / ネット・インベストメント / 環境外部性 / 水利権の取引 / パレート効率性 |
Research Abstract |
今年度は、以下の研究を行った。 1.再生可能資源の持続可能性研究として、「水」を取り上げ、河川における効率的使用の性質と問題を考察した。まず、河川に複数地域が存在し、各地域で水を用いた経済活動が行われるモデルを提示した。そこでは、上流地域の経済活動が下流地域に外部不経済をもたらす。このモデルにおいて、水利権の取引をもとに、下流の地域が政策を介入することで、上流の行動を変化させ、効率的水使用を実現することを明らかにした。具体的には、下流が上流との取引に外部性と関わる、適切な大きさの課税と補助金支出を組み合わせた政策を行うこと(上流から水利権を購入することに対して補助金支出、売ることに対して課税)、あるいは、下流の生産物に対して補助金支出を行うことで、効率性は達成される。この研究は、3月の「慶應環境会議」で報告した。 2.持続可能性の研究とその応用としての持続可能性指標を中心にした展望論文をまとめた。ここでは、世代間公正、経済成長論との関わり、実証研究などが紹介された。この論文は、『環境の経済理論』(岩波書店、2002年)に収められた。 3.「グリーンNNP」と呼ばれるグリーン国民会計指標は、外部性を含む場合や効用関数が一般化したときに意味付けとして理論的な限界を持つ。この限界に対して、「利子ストック」という概念を導入して、グリーンNNPの意義付けを行った。さまざまな経済モデルの拡張に対して、調整項など補正を必要としない意義付けを提示した。この研究は、『環境経済学のフロンティア』(剄草書房、2002年)に収められた。
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