2001 Fiscal Year Annual Research Report
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13630033
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
北坂 真一 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 助教授 (40234249)
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Keywords | 財政政策 / 金融政策 / LST-VAR |
Research Abstract |
本年は、主に以下の4つのことをおこなった。 まず第1に、わが国における財政政策について、特に90年代以降の景気対策を中心に、その政策決定のプロセスから日本経済全体に及ぼす効果の大きさなどについて考察した。この結果、財政政策のポイントはその発動のタイミングと大きさに集約されること。タイミングについては、景気判断の重要性や予算審議の期間、政策発動後から景気に影響するまでの外部ラグの長さなどが重要な問題となることが明らかにされた。また大きさについては、いわゆる「真水」と呼ばれる部分の大きさや、予算未消化の問題などがあることが明らかにされた。 次に2つ目として、わが国における金融政策について、特に近年の低金利政策からゼロ金利政策、量的緩和にいたるプロセスを中心に調査検討し、その政策決定プロセスとともに金融政策の有効性について論点を整理した。その結果、金融政策の波及経路、資産価格の変動、効果が現れるまでのタイム・ラグ、そしてその効果の非対称性などの観点が重要であることが明らかになった。中でも金融政策の非対称的効果については、極めて重要な問題であるにも関わらず、わが国における実証研究の蓄積が極めて乏しいことも明らかになった。 そこで3つ目として、金融政策の非対称的効果について、わが国を対象にLST-VAR(Logistic Smooth Transition VAR)モデルを使い、実証分析を行った。この結果、非対称性の意味を、金融政策の緩和と引き締めにおける効果の非対称性、景気局面における非対称性、金融政策の大きさに関する非対称性、の3つに整理して考察すると、わが国では特に景気局面における非対称性が顕著であり、過去のデータからは景気を大きく変えるような効果を金融政策が持たなかったことが示唆された。 最後に現在は、金融当局の政策反応関数について、理論モデルや計量分析の方法について検討しているところであり、次年度に向けて1つの論文に仕上げることを予定している。
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