2001 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル・エコノミーにおける世界経済管理の政治経済学的考察
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13630038
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 隆生 北海道大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (70091692)
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Keywords | 国際社会 / 国際公共財 / ヘゲモニー / 自由貿易平和主義 / ホッブス的国際関係 / 比較生産費原理 / パシネッティ型純粋労働経済モデル / 開放体系下のマクロ経済均衡 |
Research Abstract |
(1) 国際関係モデルはグローバル化の中で,これまでのホッブス的,カント的,グロティウス的モデルの分裂を一層深くしている.そのような分裂の放置の中では,グローバル化時代の国際関係を概念化することは困難である.そこで,(1)近代のジッペとしての国家(state)を構成要素とするリアリスト=ホッブス的国際関係と普遍的世界市場を基盤とするリベラル=カント的国際関係の両面の存在を認識した上で,それらが相互に関連しあうことを,自由貿易平和主義の限界を指摘し,また勢力関係が経済的諸関係によって規定されていることを指摘することによって明らかにし,(2)経済的には世界市場(グローバル・エコノミー)のもつ固有の緊張関係が国民的政策によっては解決されえないこと,したがって国際公共財供給がグローバル・エコノミーの安定に不可欠であることを示し,(3)それらが国際公共財供給システムを媒介に両関係が国際システム・国際社会として統合されることを理論的・歴史的分析によって明らかにした.これによって,ヘドリー・ブル=グロティウス的国際社会モデルを拡張し,グローバル化を含む現実分析の基軸に置くことを可能とした.(論文「ステイトとネイション-近代国民国家と世界経済の政治経済学(6)」) (2) これまで比較生産費原理に見られる国際分業論とアブソープション・モデルに見られる国際マクロ経済学の間には理論的断絶が存在してきた.この断絶を埋めるために,L.L.パシネッティ(1993)の純粋労働経済モデルを開放体系として再定義し,自然価格から乖離する世界市場価格形成を前提とする際のマクロ経済均衡条件を,物的数量体系と価格体系の双対の経済体系において定式化した.これによって一般均衡の性格をもつマーシャルの交易条件論とハロッドからはじまる国際マクロ経済分析をつなぐ理論的基礎を与え,また,これまでグローバル化に関して看過されてきた開放体系の含むマクロ経済的緊張関係をはじめて一般的に定式化し,自然価格にのみ依存するケインズ派分析の弱点を克服することを可能とした.(札幌大学萬谷教授退任論文集への招待論文において近刊)
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Research Products
(1 results)