2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13630051
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今井 晴雄 京都大学, 経済研究所, 教授 (10144396)
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Keywords | 限定合理性 / 広告競争 / 有界記憶 |
Research Abstract |
有限の注目対象にしか、注意を払えない消費者に対する企業間の広告競争を、動学的にとらえるモデルの構築を第一目標とし、それに基づいた厚生比較について検討を加えることを究極のゴールとしていた。 とくに、消費者の選好が耐久財型で、さらに企業が価格選択を行えるような枠組みでの動学均衡を検討していたが、方法的な限界から、下記のような設定に限定されることとなった。 主たる検討対象とした設定では、消費者の選好は各時点で独立に、確率的に決まる。また、注意対象がいずれの企業の財にあるかも、各時点で独立に、確率的に決まる。そして、各企業の選択肢は、広告水準のみで、価格は一定であるものとされる。 このような設定下でのマルコフ完全均衡を特徴付け、完全に陽表的ではないが、解が満たす条件を求めた。 単純な設定の中で、重要なファクターは、企業広告が、相手企業の潜在顧客発掘に対する阻害要因としての概能を持たせたことで(非対称性と合わせて)均衡が定常的とはならないための主たる役割を果たす。 均衡パスが示す性質は、減衰振動型の安定軌道であり、広告活動の効果に相互依存がある場合の一つのパターンである。当然、初期値が定常値からカイ離している場合の、厚生損失を示唆する。他方、定常水準自体の厚生評価は、社会的に過大でも過小でもある。これは、効用の変化を企業が価格増によって吸収するルートが閉ざされているためで、現在の手法の限界を示す。これらの結果は、IMAI & HORIE "Advertising Competition under Bounded Memories and Random Preferences"(2004) KIERとしてまとめる予定である。 平行して、より動学的な依存関係の高いバージョン(選好、記憶とも、過去に依存する)の研究を、今度は、一方のみが戦略的に行動するケースを取り上げて動学的最適化問題として定式化し、解を求めた。予想されるように広告を戦略的に行う主体のシェアには有利に働くが、非戦略的な側の行動にも依存して、やはり厚生分析は、あいまいとなる。この設定を、政治的なキャンペーン競争に適用したモデルを分析し、NGOの役割についての検討を試みた。さらに、寡占問題等での協調可能性や、環境経済の課題にこの枠組みを応用するための準備的研究を行った。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Haruo Imai, M.Horie: "Campaign Competition and the Effect of Information Technology"Proceedings of PISTA 03. 235-239 (2003)
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[Publications] Haruo Imai: "Pre-Negotiation for an International Emission Reduction Game"SSRN. 3・4. 1-20 (2003)
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[Publications] 今井 晴雄: "戦略的協力ゲームと事前交渉"ゲーム理論の新展開. 241-263 (2002)
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[Publications] Haruo Imai: "On the Incentive Consequences of Alternative CDM Baseline Schemes"International Frameworks and Technological Strategies to Prevent Climate Change. 110-126 (2002)