2003 Fiscal Year Annual Research Report
国際公共財としての知的所有権システムと特許競争のフロンティア
Project/Area Number |
13630053
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
坂井 昭夫 京都大学, 経済研究所, 教授 (20067713)
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Keywords | バイオ関連特許 / ビジネス方法特許 / パブリック・ドメイン / プロパテント / ベンチャー企業 |
Research Abstract |
本研究の最終年であるので、追加的な資料収集・解析や関連研究領域における最近の業績の検討など必要な補充的作業をおこないつつ、研究計画の完遂と成果の集約に努めた。アメリカの知的所有権制度・政策の運営と米国経済のニューエコノミー化との関連に留意しつつ、その時代状況の中でバイオ関連特許やビジネス方法特許をめぐってどのような動きがあったのかを詳細に跡づけ、その経済的意味を探ることに努めた結果であるが、2編の論文をまとめるに至った。「米国バイオ関連特許の発展とその含意」(『経済論叢』)では、1980年代の米国バイオ産業の発展と特許の役割、90年代のヒトゲノム解読とインサイト・ショック、遺伝情報をめぐる公的プロジェクトとバイオベンチャー企業の攻防戦を明らかにした上で、遺伝子特許競争がポストゲノム時代に及ぼす影響に説き及んだ。特許乱立がポストゲノム技術に内在する全人類的なヘルスケア利益を損なってしまうおそれを、80年代からの流れの中に位置づけて指摘することができたと考える。「アメリカにおけるビジネス方法特許の動向とその問題点」(『KIER』)では、ステート・ストリート銀行事件判決を機に90年代末にビジネス方法特許ブームが現出した経緯、特許紛争の勃発とビジネス方法特許に対する世界的規模での懐疑・批判の高まり、米国政府・特許商標庁等が講じた対応策およびそれによる過渡的問題の解消、未解決のまま残されている本質的な問題を、順を追って検討した。ここでもやはり、国際公共財の性格を有するビジネス方法の特許化が科学技術や産業の発展にマイナス作用を及ぼす懸念を禁じえないこと、それは特許制度本来の趣旨にもとるものであること、への注意を喚起する形になった。
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