2002 Fiscal Year Annual Research Report
診療報酬制度改革の方向に関する理論・実験経済学的研究
Project/Area Number |
13630078
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Research Institution | Yokkaichi University |
Principal Investigator |
稲垣 秀夫 四日市大学, 経済学部, 教授 (70159937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤木 博文 名城大学, 都市情報学部, 助教授 (30254270)
鎌田 繁則 名城大学, 都市情報学部, 助教授 (70214509)
森 徹 名古屋市立大学, 経済学部, 教授 (60134160)
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Keywords | 出来高払 / 包括支払 / モノ / サービス / 実験経済学 / 過剰診療 / 過少診療 / 代理人 |
Research Abstract |
14年度の研究は、出来高払と包括支払が診察・看護などの患者に直に接する「サービス」と検査・投薬などの「モノ」に関わる要素に与える影響を実験経済学的手法によって検証した。検証実験を遂行する際には、実験参加者に実験内容を十分に説明し同意を得て行った。 実験では、「サーピス」的要素には医療機関被験者と患者被験者が直接対面する「FTF(Face-to-Face)実験」を、「モノ」関わる要素に医療機関被験者がPCを操作する「PC実験」を対応させた。これら2つ実験は、それぞれ医療機関が患者の代理人として行動するか行動しないかの2つのケースに区分して行った。各実験とも、医療機関は患者への一方的な医療サービス供給する状況が想定された。検証結果は次のようである。 出来高払においては、医療機関が自己の利潤のみを最大化するように行動するならば、理論的には極端な過剰診療を行うことになる。しかしながら、検証の結果はPCとFTFともに想定した疾病レベルより高めであるが、疾病に応じた治療レベルが選択された。PCでの選択治療レベルはFTFのそれより高めであった。医療機関が患者の便益に配意する時には、PCでのレベルがFTFより高い傾向が見られるが、疾病に応じた治療レベル理論値から大きく乖離しなかった。 包括支払の場合は、医療機関が自己の利益のみを配慮するならば、出来高払とは逆にほとんど治療はしないことが理論的には合理的な行動となる。PCとFTFおける選択治療レベルは理論的な選択治療レベルより高く、FTFはPCにおけるレベルより高くなっている。極端な過少診療とはならない。医療機関が患者の便益に配慮する場合、出来高払のケースと同様に疾病レベルに応じる選択治療レベルからの大きな乖離は見られない。 以上の検証結果から、医療サービスにおける対面「サービス」の部分は、検査・投薬などの「モノ」に関わる部分こ比べて相対的に報酬支払方法の影響が小さい。このことから、医療サービスにおける「モノ」の部分が過剰あるいは過少を生じさせているといえる。また、医療機関が患者の便益に対する配慮の度合も影響している。
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