2001 Fiscal Year Annual Research Report
初期工業化期ドイツにおける環境問題と住民運動に関する研究
Project/Area Number |
13630092
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田北 廣道 九州大学, 大学院・経済学研究院, 教授 (50117149)
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Keywords | 環境史 / 住民運動 / 産業汚染 |
Research Abstract |
本年度は、研究計画に沿って研究動向の検討と海外の文書館・図書館での史料収集との2つの方向から作業を進めた。その主要な成果は、下記の3点に要約できる。 1)工業化と環境問題に関する研究動向を18/19世紀と20世紀後半の2つの時期につき対比しつつ追求した。 (1)初期工業化期の環境問題については、前論文で取り上げた木材から化石燃料へのエネルギー源の転換をめぐる論争を一段と掘り下げて検討し、(1)イギリスと対照的に薪炭不足との因果関係を強調する所説が今日では退けられていること、(2)18世紀中の自然のr原材料化jという環境意識の緩やかな変化と、19世紀前の「生業合理性(モラルエコノミー)」から「市場合理性」への転換が、そのための伏線として重要だったこと、(3)19世紀後半以降の鉄鋼・化学工業の発展と平行してエネルギー転換が完成したこと、の3点を明らかにした。この成果の一端は、社会経済史学会第70回大会の共通論題「環境経済史の挑戦」(於、上智大学)におけるコメントの形で発表された。 (2)中東欧学界における環境史研究の動向調査を行った。「資本主義の基本矛盾としての環境問題」あるいは「国家独占資本主義の全般的危機の兆候としての環境問題」と、社会主義体制が環境危機の克服にさいして持つ制度的な優越性との基本認識は、1980年代の様々な批判にも拘わらず堅持されたこと、しかしながら実在の社会主義諸国の環境政策をr法規制jの失敗と片づけことは早計に過ぎること、の2点を明らかにした(論文の第一部に掲載)。 2)初期工業化期ドイツにおける「最古かつ最大の環境闘争」と呼ばれる1802/03年バンベルクのガラス工場建設をめぐる住民運動に関わる史料調査を実施した。バンベルク市立・州立文書館とバンベルク州立図書館に所蔵される未刊行の手書き史料(嘆願書、調査記録、裁判記録)、賛否双方立場から医師・官房学者・官僚など多様な論者の著した小冊子・新聞記事・鑑定書、および関連する研究文献を収集した。その分析結果は、次年度に公表する予定である
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Research Products
(2 results)