2002 Fiscal Year Annual Research Report
イギリス私法体系が20世紀初頭の中国社会に与えた社会経済的影響
Project/Area Number |
13630102
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
本野 英一 早稲田大学, 政治経済学部, 教授 (20183973)
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Keywords | 中英関係史 / 上海租界 / 香港 / 中英合弁事業 / 「英語を話す中国人」 / 会社登記制度 |
Research Abstract |
本年度の研究活動は、昨年イギリス国立公文書館(Public Record Office)で入手した、イギリス外務省領事報告文書の分析に終始した。その成果は三点にまとめられる。本研究の主たるテーマである会社登記制度問題については、1916年から1923年にかけて、香港と上海租界内部でのみ効力を発する本国会社法に準拠した、香港会社法令に基づく、会社登記制度を利用してイギリス籍有限株式会社の資格を利用しようとする中国人実業家の企みを排斥しようとするイギリス政府当局の政策が、在華イギリス企業経営者とその中国人株主に与えた影響のみならず、アメリカの対中国政策にも甚大な影響を与えていたという、先行研究で明らかにされなかった事実が明らかになった。この主題に関する史料は1927年まで残っており、これを読了し、その成果を今秋の政治経済学・経済史学会(旧土地制度史学会)秋季学術大会で報告の後、論文にまとめて投稿する予定である。 第二の成果は、第一次世界大戦期に中国への経済進出を強めた日本資本に対抗するために、イギリス、アメリカ企業と合弁で鉄鋼事業を起こそうと画策していた中国人実業家グループの活動を発見したことである。これは、今年中に日本で入手利用可能な中国側史料と突き合わせて、勤務先の紀要論文に発表する予定である。なお、この二つの論文の要約は、『歴史評論』編集部から依頼を受けた論文として発表を予定している。 最後に、イギリス国立公文書館での史料収集で発見したのは、1898年から1930年代初頭にかけての商標登録問題や民事訴訟を扱う裁判所に関する膨大な史料がまだ手付かずのまま大量にねむっていることである。これらの史料に関する研究は、今回の研究計画ではとても消化できる分量ではない。今後の継続課題としたい。
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