2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13630110
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
矢野 順治 広島大学, 経済学部, 教授 (40210306)
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Keywords | 自己実現的通貨危機 / 資本移動 / 先行指標 / 伝染効果 / 共和分 |
Research Abstract |
昨年度は、1997年東アジア危機に関して、タイ、インドネシア、フィリッピン、韓国に関するデータの収集・検討を行った。次にこれらの国々におけるマクロ的・ミクロ的ファンダメンタルズに関する詳細な検討を行った。その結果、これらの諸国におけるマクロ的ファンダメンタルズに関しては、1994年メキシコ通貨危機とある程度の共通性が見られるが、異質な側面も存在することが明らかとなった。銀行部門を中心としたミクロ的ファンダメンタルズに関してはかなり共通した問題点が明らかとなった。さらにこれら4ケ国に関するSachs-Tornel-Velasco型通貨危機指標を作成し、1994年メキシコ通貨危機を分析対象としたSachsモデルに東アジア通貨危機を追加する形で試論的分析を行った。この分析結果は必ずしも満足のゆくものではなかった。そこで本年度は、1997年東アジア通貨危機、1999年ブラジル通貨危機、2002年アルゼンチン通貨危機の各々について国際比較データを作成し、それぞれ自己実現的通貨危機モデルに基づいた詳細な分析を行った。その結果、東アジア通貨危機には、「自己実現的通貨危機」的性格が強く観察されるが、ブラジル通貨危機、及びアルゼンチン危機においてはSachs-Velasco-Tornellモデルの説明力には限界があることが明らかとなった。そこで次に、通貨危機の「伝染効果」において重要なファクターである「Financial Contagion」現象に対して、共和分分析によるアプローチを試みた。東アジア、南米のいずれの場合も90年代後半により強い金利の「Co-movements」が観察されることが明らかとなった。これらの研究は、まず広島大学経済学部紀要に公表し、その後改訂を経てレフリー制雑誌に投稿予定である。
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[Publications] 矢野順治, 池本雪乃: "90年代通貨危機の実証分析"広島大学経済論叢. 27・2(未定). (2003)
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[Publications] 矢野順治, ティー・キャン・ヘーン: "通貨危機の伝染効果:共和分アプローチ"広島大学経済論叢. 27・2(未定). (2003)