2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13630153
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
井上 正 早稲田大学, 社会科学部, 教授 (70151610)
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Keywords | 職務配置 / 企業特殊人的資本 / 情報の非対称性 / 世代重複モデル |
Research Abstract |
ある企業が、他企業から労働者を雇用しようとする場合、雇い入れ企業は労働者の(生産)能力レベルに関して、情報的に不利な立場にある。この不利な状況を克服するため、個人の能力に関し不正確ではあるが、一つのシグナルとして労働者の現在の「職務配置」を使うことができる。その結果、職務配置を観察することで、現在の企業と、これからこの労働者を雇い入れようとする企業間の情報の非対称性は、幾分和らげられる。このような状況の下で、本研究では、次の3つの事柄を明らかにする。第1に、賃金は、能力レベルよりも、むしろ職務に関連する傾向があるということ。第2に、従業員の職務配置は、しばしば非効率的に行われる傾向があること。第3に、この非効率性の程度は、「企業特殊人的資本」のレベルと負の相関の傾向があるということ。これらの課題を分析するためP.Samuelsonによって定式化され、Wallaceらによって様々な問題に適用された「世代重複モデル(overlapping-generations model)」を用いて分析を行う。従来、上記の課題に関しては、2つのアプローチが取られてきている。1つは、ある企業によって明らかになった従業員の能力に関する情報は、すべての企業が手に入れることができるというものである。もう1つは、その従業員を雇用している企業のみ、その情報は明らかになるというものである。本研究では、後者の仮定(個人の能力についての情報は、その従業員を雇用している企業にのみ明らかになる)に依拠しながら、他の企業は従業員の職務配置を考慮することで、従業員の能力についての情報を集めることができると考え、上記の3つの問題点を議論する。その結果、本年度の研究からは、賃金は能力レベルよりも、むしろ職務に関連する傾向があるということが明らかにした。来年度は、第2,第3の命題の導出、およびモデルの実証性の検証を行い、いくつかの意味のある結論を導き出す予定である。
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