2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640026
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
隅広 秀康 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60068129)
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Keywords | 射影空聞上のベクトル束 / Hartshorne予想 / ヒルベルトスキーム / 行列式多様体 / フロベニウス写像 / ベクトル束の分解定理 |
Research Abstract |
平成14年度に引き続いて、射影空間上のベクトル束の分解問題を研究し、以下の諸結果を得た。 これまでの研究で次のベクトル束の分解定理が得られた。分解定理:Pn(n≧4)を代数的閉体(標数は任意でよい)上定義されたn次元射影空間とし、EをPn上の階数2のベクトル束とする。このとき、Eが線束に分解するための必要十分条件はEの自己準同型写像のなす層End(E)の1次コホモロジー群が消えることである。従って、標数0の体上の分解問題も正標数の場合に帰着されることが示されたので、今年度では、主に正標数の場合の分解問題を研究した。 1)位相的に自明なペクトル束の分解定理。EをP4上の階数2の非常に豊富なベクトル束とし、自然数aをE(-a)が零でない大域切断をもつ最大の自然数とする。こめとき、Eに付随する行列式曲面を用いて、aに関する次の不等式を証明した。 (C1+√<C1^2-4C2>)/2≦a≦C1-C1C2/(C1^2-C2)ただし、C1、C2はEのチャーン数である。 この不等式を用いて、位相的に自明なベクトル束Eのチャーン数をC1=α+β、C2=αβ(α≧β)とするとき、α≧(-1+√<4β-3>/2)βならば、Eは線束の直和であることを示した。従って、1≦β≦3ならば、Eは線束の直和である。 2)正標数における行列式多様体の代数・幾何構造とベクトル束の分解定理。EをP4上の階数2の非常に豊富なベクトル束とし、XをEの行列式曲面、ZをEに付随するX上の因子とする。さらに、pを体の標数としFを次数qのFrobenius写像とする。このとき、次の事柄が成立することを示した。 a)Eが線束に分解することと因子Zが数値的に正であることは同値である。 b)Xの不正則数=0、Xの第一次正則微分形式=0。 c)C1^2-4C2>0とする。このとき、EをXに制限して得られるペクトル束E|XはBogomolovの意味で非安定である。さらに、E|XのFによる逆像の自己同型群の次元(=H^0(X, End(F^*(E|X)))の次元)はH^0(X, qC)の次元に等しい。ただし、C=(2a-C1)L、L=Xの超平面切断因子。従って、Eが線束に分解するためにはH^1(X, End(F^*(E|X)))の次元≦0(q^1)であることが必要十分である。
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