2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640230
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
有本 信雄 国立天文台, 光学赤外線天文学・観測システム研究系, 教授 (60242096)
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Keywords | 銀河進化 / 銀河形成 / 楕円銀河 / 銀河の化学進化 / 恒星スペクトル / 星の種族構造 |
Research Abstract |
本年度は本研究の初年度である。すばる望遠鏡やVLTなどの超大型地上望遠鏡で楕円銀河の高品位の分光データを収得し、水素バルマー系列のHγ吸収線の強度から楕円銀河の年齢を決定するのが本研究の主目的である。幸いにもすばる望遠鏡のS02A期と欧州南天文台のNTTの2002年春期にそれぞれ二晩と三晩が採択されたので、H14年の4月と5月におとめ座銀河団の楕円銀河と南天のフィールド楕円銀河の高品位のデータが得られる予定である。 本年度はスペイン領パルマ諸島にあるウイリアム・ハーシェル望遠鏡で収得した中品位のデータを用いて、おとめ座銀河団中にある6個の楕円銀河の年齢を測定した。これらの銀河は色-等級関係に上にのる普通の楕円銀河である。この結果では、いずれの楕円銀河も80億年よりは古く、銀河の年齢と光度の間には顕著な相関は見られない。一方、副次的に測定できる金属量の方は、銀河の光度や、色、速度分散などと良い相関を示す。これによって、楕円銀河の色-等級関係の起源が金属量にあると結論できよう。しかしながら、この結果は暫定的なものであり、すばる望遠鏡による高品位の分光データによる再解析が必要である。また、銀河環境と年齢との関係を調べる必要があろう。 楕円銀河の年齢を正確に求めることは本研究によって初めて可能になったが、その信頼性を確かめるには他の方法で年齢の測定が可能である天体についてHγ法で年齢を測定し、比較検討することが必要である。この目的のために、金属量がもっとも高い球状星団47Tucの年齢を求めた。その結果は200億年を超えるものとなった。これはこれまでに色-等級図の転向点の光度から求められてきた90-130億年という年齢に比べてあまりにも大きな値である。この矛盾を解消するには、通常の星の進化路に重力による元素の拡散の効果や、アルファ元素の相対組成比を鉄に比べて増加させる(実際の球状星団ではそうなっている)などの処置が必要であることが分かった。異なる方法による年齢評価の食い違いが、47Tucの独自の問題であるのか、Hγ法の問題であるのかは今後さらに、金属量の違う星団や、もっと多数の星団について検証すべき考察の対象であることが明らかになった。
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