量子ホール効果のブレークダウンにおける電流分布と非平衡相転移

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 13640314
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 明楽 浩史 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20184129)
• Keywords: 量子ホール効果 / 非線形伝導 / 理論

Research Abstract

量子ホール系にブレークダウン臨界電流以上の電流を流した場合に現れるエネルギー散逸の大きい状態を理論的に研究した。
1.この状態の巨視的空間変動を記述する流体力学方程式を微視的な電子過程から導出した。Hot-Electronモデルに基づき系を特徴づける変数として電子温度と化学ポテンシャルを選び、それらの時間空間変動を記述する方程式を導出した。導出に用いた主な仮定は局所平衡で、抵抗率が大きくしたがって電子温度の高い領域においては成り立つと考えられる。電子過程のモデルとしては、緩やかにゆらぐポテンシャルでの電子のドリフト運動とランダウ準位内の電子・電子および電子・フォノン散乱を取り入れた。導出された方程式の特徴は、磁場中のドリフト運動のため電場に垂直なエネルギー流の項をもつことである。
2.導出された方程式を用いてブレークダウンに伴って現れる空間変動を計算により明らかにした。最も簡単な例として、十分長い試料の幅方向の電子温度の空間変動を取り上げた。ドリフトによるエネルギー流のため、電流方向の電場がゼロでないときには試料端で温度勾配が生じ、その結果電子温度に空間変動が現れることが明らかになった。この空間変動の特徴は、電子温度が一方の端で高く他方で低くなるという点である。最近のサイクロトロン発光の実験(Y.Kawano and S.Komiyama : Phys.Rev.B 61,2931,2000)で観測された発光強度の空間分布が同じ傾向を示している。電流分布も同様の非対称な空間変動を示すが、この電流分布は量子ホール効果における対称な分布(MacDonald et al. : Phys.Rev.B 28,3648,1983)とは顕著な違いをもつことが明らかになった。

Research Products

• [Publications] Hiroshi AKERA: "Hydrodynamic Equation for the Breakdown of the Quantum Hall Effect in a Uniform Current"Journal of the Physical Society of Japan. Vol.70,No.6. 1468-1471 (2001)
• [Publications] Hiroshi AKERA: "Hydrodynamic Equations in Quantum Hall Systems at Large Currents"Journal of the Physical Society of Japan. Vol.71,No.1. 228-236 (2002)