2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640321
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小林 功佳 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (80221969)
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Keywords | 表面 / 電気伝導 / 半導体 / 表面状態 / ナノスケール / 走査プローブ顕微鏡 / バリスティック |
Research Abstract |
本研究の目的は、ナノスケールにおける表面電気伝導の理論的な研究である。昨年度までは、簡単なモデルを用いて研究を行ったが、今年度は現実的な表面での研究を行った。対象とした表面はIV族半導体(111)2×1表面である。これらの表面の原子構造は、Pandeyによって提唱されたπボンド鎖構造であることが知られている。πボンド鎖構造の表面最外層では、原子が交互に並び、ジグザグ鎖が構成されているが、ジグザグ鎖の構造は同じIV族半導体でも元素によって異なる。すなわち、ダイヤモンド表面ではバックリングが無いのに対して、シリコンおよびゲルマニウム表面では、バックリングが起こっている。このバックリングの違いは表面電気伝導の特性の違いに反映されることが予想されることから、電気伝導度の数値計算を行った。表面の電子状態はsps^*タイトバインディング法を用いて表し、伝導度の計算にはランダウアー公式を用いた。主に2探針電気伝導度の計算を行った。 計算の結果わかったことは、ダイヤモンド表面とシリコン・ゲルマニウム表面とでは特性が異なり、前者の場合には原子位置依存性・バイアス非対称性が無いのに対して、後者では大きくみられることが分かった。また電気伝導度の異方性はダイヤモンド表面で大きく、シリコン、ゲルマニウム表面の順に小さいことが分かった。これらは、πボンド鎖のバックリングの大きさがこの順で大きいことから説明できる。また、摂動論を用いたNiuらによる理論では、伝導度は表面のグリーン関数の絶対値の二乗に比例することが知られている。この結果を用いると、伝導度は有効質量の平方根に反比例するが、実際に、表面のエネルギーバンドの分散から電気伝導度の異方性の傾向を説明できることがわかった。
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Research Products
(1 results)