2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640321
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
小林 功佳 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (80221969)
|
Keywords | ナノ構造 / 電気伝導 / 表面 / ステップ / ブロッホ関数 / エバネッセント波 / 表面状態 |
Research Abstract |
本年度は、Si(111)√<3>×√<3>-Ag表面の単原子ステップによる電気抵抗の研究を行った。この表面の電気伝導度の測定が最近行われ、温度依存性等の興味ある実験データが示されれている。本研究では、実験データを理解するとともに、従来研究されていなかった単原子ステップによるナノスケールでの電気抵抗についての新たな知見を得るために理論的な研究を行った。 初めに、Si(111)√<3>×√<3>-Ag表面のステップの電子状態を計算した。その結果、ステップの付近にのみ波動関数の振幅が局在するエッジ状態を見出した。このエッジ状態は、ステップ付近の下段テラスに局在するステップ状態であり、従来見られなかった特異なステップ状態である。また、ステップの電気伝導度をランダウアー的な計算法により計算したところ、実験値を良く再現する計算値が得られた。計算で得られた電気伝導度スペクトルの形は、一次元平面波がバリアを透過するモデルでよく説明できることがわかった。しかし、電気伝導度の絶対値は平面波の透過モデルでは説明できなかった。このため、エバネッセント波を含む波の一般的な振幅と位相を新たに定義し、ブロッホ波の透過率の表式を導いた。新たに導いた表式はスペクトルの形だけでなく、その絶対値も良く説明することがわかった。一般に、ブロッホ波の透過では、ブロッホ波数の不一致による抵抗とブロッホ関数の周期的部分の不連続性から生ずる抵抗とに分けて理解することができるといえる。
|
Research Products
(2 results)