2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640373
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
石井 靖 中央大学, 理工学部, 教授 (60143541)
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Keywords | 準結晶 / 構造変態 / 近似結晶 / フェイゾン / 弾性論 / 電子構造 / 擬ギャップ |
Research Abstract |
本年度のはじめにコーネル大学に2週問ほど滞在し、C.L.HenleyのグループとAl-Ni-Co系10方晶の微視的構造模型について議論した。Henleyらは現実的な原子間ポテンシャルを使って、Al-Ni-Co系10方晶の原子配置をモンテカルロ法により理論的に予測することを試みている。準結晶ではその背景にある準周期的タイリングのタイルの組み換えで表現されるような局所的な構造変化が重要と考えられているが、Henleyらの計算コードではこのような過程も考慮して安定な原子配置を探索する。このコードを譲り受けて、我々はAl-Ni-Co系でAlと遷移金属の組成、あるいはNiとCoの組成が理想的な値からはずれた時の構造変化を系統的に調べた。その結果、組成の変化に関わらず背景にあるタイリングの枠組みは影響を受けず、タイルの原子修飾のみが変化すると考えてよいことがわかった。今後は原子修飾の異なるタイルのエネルギーや貼り合わせ規則をモデル化して、より大きな系のシミュレーションによりAl-Ni-Co系10方晶で発見されている数多くの秩序相の構造モデルに対する理論的予測を行ないたい。 上記の研究と並行して、Cd-Yb系、Zn-Mg-Sc系準結晶の近似結晶にあたる立方晶の電子構造を第一原理的研究を続けた。本年度はこれまで我々が主張してきたこの系におけるsd混成の重要性を化学結合論的に裏付けるために、電荷密度分布や化学結合の結合・反結合性を評価するCOHP(Crystal Orbital Hamilton Population)を計算し、準結晶形成における化学結合性の役割を検討した。その結果、立方晶単位胞の頂点と体心に置かれた正20面体クラスターとそれをつなぐ原子(glue atom)との問の化学結合はフェルミ準位のところで結合性から反結合性へと変化するという半導体に類似の様相をもっていることがわかった。これによりこれらの結晶には単純な金属結合とは非常に異なる様相があると考えられる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Y.Ishii, T.Fujiwara: "Electronic Structures of Cd-based Quasicrystals and Approximants"J. Alloys Compounds. 342. 343-347 (2002)
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[Publications] Y.Arai, Y.Ishii: "Transport Properties of Three-Dimensional Penrose Lattice"J. Alloys Compounds. 342. 374-376 (2002)
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[Publications] K.Oshio, Y.Ishii: "Electronic Structures of Large Approximants of Zn-Mg-Y"J. Alloys Compounds. 342. 402-404 (2002)
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[Publications] Y.Ishii, T.Fujiwara: "Electronic Structures and Cohesion Mechanism of Cd-based Quasicrystals"J. Non-cryst. Solids.. 312-314. 494-497 (2002)
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[Publications] K.Hiraga, K.Sugiyama, Y.Ishii: "Atom Cluster Arrangement in a 2/1 Cubic Approximant in Al-Zn-Mg Alloy System"Philos. Mag. Lett.. 82. 341-347 (2002)