2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640382
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山室 修 大阪大学, 大学院・理学研究科, 講師 (20200777)
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Keywords | ガラス / 水 / 水溶液 / 中性子散乱 / 水素結合 / 低エネルギー励起 / 中距離密度揺らぎ / アニール効果 |
Research Abstract |
昨年度は,メタノール(CD_3OH)および六フッ化硫黄(SF_6)の水溶液ガラスを低温蒸着法で作成しその中性子非弾性散乱を測定した。それに引き続き,本年度はSF_6-17D_2Oの蒸着ガラスの中性子回折実験を高エネルギー加速器機構中性子散乱実験施設(KENS)のSWAN分光器を用いて行った。六フッ化硫黄を添加すると,疎水性相互作用により水が包接水和物結晶で見られるような籠状水素結合ネットワークを形成し,水素結合ネットワークの秩序化が起こることが期待される。今回の実験では,干渉性散乱(中性子が回折を起こす散乱)を観測するため,試料には重水試料(SF_6-17D_2O)を用いた。蒸着直後のアモルファス試料,ガラス転移温度(135K)より少し低い温度(120K)でアニールした試料,および結晶化試料を測定した。不純物を含まないアモルファス氷ではアニールによって第1回折ピークの先鋭化と低Qシフト(平均密度の減少と水素結合系の秩序化に対応)が生じたが,アモルファスSF_6-17D_2Oではアニールによって第1回折ピークはほとんど変化しなかった。中距離密度揺らぎに対応する0.1Å^<-1>程度のブロードなピークに関しては,純粋なアモルファス氷でもアモルファスSF_6-17D_2Oでも,アニールによって減少することが分かった。以上の結果は,六フッ化硫黄の添加が水素結合系を秩序化させ,構造変化が起こりにくくさせていることを示している。昨年までのデータから,六フッ化硫黄の添加は低エネルギー励起強度を減少させることが分かっている。昨年度(中性子非弾性散乱)と本年度(中性子回折)の結果を総合することにより,蒸着アモルファス氷の低エネルギー励起が水素結合の部分的切断,乱れ,歪みによって生じることが実験的に示された。 以上の成果を2002年7月にカナダのニューファウンドランドで開催された国際会議「10^<th> International Conference on the Physics and Chemistry of Ice」および12月に大阪で開催された第2回日本中性子科学会年会において発表し,国内外の同分野の研究者から高い評価を得た。 現在,より確実な結論を得るため,Xeを添加した試料についてもこれまでと同様の測定を行っている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] O.Yamamuro: "Inelastic Neutron Scattering and Low-energy Excitation of Amorphous SF6-hydrate Prepared by Vapor-deposition Technique"Canadian Journal of Physics. (印刷中).
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[Publications] O.Yamamuro: "The Simplest Molecular Glass CS2 Realised by Low-temperature Vapour-deposition Technique"Journal of Physics : Condensed Matter. (印刷中).