2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13640401
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
橋本 智香子 (内山 智香子) 山梨大学, 工学部, 助教授 (30221807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相原 正樹 奈良先端科学技術大学院大学, 特質創成研究所, 教授 (70091163)
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Keywords | 量子情報 / スピン-ボソンモデル / パルス制御法 |
Research Abstract |
量子論を情報分野で用いることが、計算の高速化、記憶容量の増加、情報の秘密保持に対するブレークスルーとなりうることが明らかとなり、さまざまな研究が飛躍的に行われている。しかし、これらの成果を実現する際には、必ず量子状態の安定性の問題が大きな障害となる。本研究は、情報を担う量子状態が外部の影響を受けて安定状態から崩壊していく過程(デコヒーレンスを量子統計力学的に制御する方法を理論的に検討することを目的としている。 量子論的な情報は、2つの量子状態を用いて作成される量子力学的な重ね合わせ状態によって担われている。この重ね合わせ状態の崩壊過程を取り扱うために、今年度は、外部からの影響を記述するモデルとして、量子論的な熱浴(環境世界)と接触している2準位系(スピンーポソンモデル)を取り扱った。特に、重ね合わせ状態の位相関係の崩壊過程(純位相緩和現象)に焦点を絞り、どのように量子情報が崩壊していくのか、その過程を記述する表式を定式化した。これまで、この緩和現象を扱う際には、熱浴との相互作用を線形なものに限った取り扱いがなされてきた。しかし、この種の相互作用は、特に固体中の量子状態の純位相緩和現象を記述することはできず、より高次の相互作用の考慮が本質的となる'本研究では、任意の次数の相互作用によって引き起こされる純位相緩和に対する表式を得た。 量子情報の崩壊過程を記述する表式を得た上で、この崩壊を制御する方法についての検討を行った。この制御法については、海外共同研究者のS.Lloyd教授によってπパルスを用いた方法が提唱されているが、その有効性は熱浴との相互作需が線形なものに限られていた。本研究では、上述の定式化をもとに、任意の次数の帽互作用をしている系に対して適用可能な、パルス制御下でのダイナミクスを記述する表式を得た。この表式は、例えば量子ドットを帯いた量子計算機における量子情報の制御に対して適用することができると思われる。
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