2001 Fiscal Year Annual Research Report
1℃温暖化のインパクト:中世温暖期の日本北方海域の古環境解析
Project/Area Number |
13640470
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
北村 晃寿 静岡大学, 理学部, 助教授 (20260581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福澤 仁之 東京都立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80208933)
池原 研 産業技術総合研究所, 主任研究官
北里 洋 静岡大学, 理学部, 教授 (00115445)
斎藤 毅 名城大学, 理工学部, 講師 (50242813)
延原 尊美 静岡大学, 教育学部, 助教授 (30262843)
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Keywords | 温暖化 / 日本北方海域 / 中世温暖期 / 小氷期 / 古環境 / 貝類 / 有孔虫 / 火山灰 |
Research Abstract |
グリーンランドにバイキングが定住したことで知られる中世温暖期の全球平均気温は現在よりも約1℃高かった。年率1%で二酸化炭素が増加する条件でのシミュレーションでは、30年後に中世温暖期と同じ状態に到来する。そこで本研究では近未来の予測のため、日本北方海域において中世温暖期以降の環境と生態系の変動史を海底堆積物の化石記録から復元する。調査対象は海洋生物の地理境界がある函館湾を選んだ。 平成13年度は漁船を傭船し、小型ピストンコアラーを用いて7地点で堆積物の試料採取を試みた。その結果、4地点(水深18m,24m,24m,51m)から堆積物試料を採取できた。堆積物の長さは0.3〜0.8mである。なお、堆積物試料を採取できなかった原因は、石炭やコークスを含む礫がコアラーの貫入を妨げたためである。堆積物試料は岩相と貝化石の層位を記載した。その結果を以下に列挙する。 (1)いずれの試料においても西暦938年に噴火した白頭山苫小牧火山灰層は確認されなかった。(2)湾奥のコア試料では泥質堆積物から砂質堆積物への急激な岩相変化が見られ、沖合いの試料では数枚の級化層理が認められた。(3)採取された貝化石のすべてが現在の函館湾に生息する。(4)水深51mから採取したコアに関しては浮遊性有孔虫の層位分布を解析中であり、その予察的結果として最下部と最上部から暖水系種Globigerinoides ruberの産することが判明した。(5)生貝の放射性炭素年代を測定した結果、函館湾におけるリザーバー効果は100年であることが判明した。 以上の結果、採取したコア試料の堆積年代はいずれも西暦938年以後であり、この期間には貝類と浮遊性有孔虫の種組成に影響を与えるほどの水温変化は起きていないことが分かった。貝化石の放射性炭素年代の測定を依頼しているので、化石記録に詳細な時間スケールを入れることができる。
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