Research Abstract |
申請課題の三宅島火山は,2000年に噴火し,2500年ぶりに直径1.6kmのカルデラを形成した.本研究課題では,カルデラ形成事件の推移を明らかにするとともに,今回の活動が三宅島の発達史の上で持つ意義,過去の噴火から今回の活動までを通じ,マグマの化学組成やマグマ供給系の火山の成長・発達にともなう変遷を明らかにすることを目的とする. これまでの研究では 1.2000年9月〜2002年3月にヘリコプター観察を32回実施し,カルデラの状況の変化,カルデラ壁の観察を行なった. 2.三宅島に渡島し,2000年の噴出物の観察を行なった. 3.噴火前に採集した岩石試料,ボーリングコア試料の全岩および鉱物化学組成の分析を進めた. その結果,ヘリコプター観察から,カルデラの陥没事件は基本的には2000年秋以降進行は止まったが,不安定な急崖がわずかづつ崩落し,カルデラ底の埋積が進んでいること,カルデラの北側と南側では構成している地層が異なっており,山体中心部の構造,すなわち北側が古く,南が新しいこと,が明らかになった.日本火山学会2001年秋季大会では山体中心部の構造と生成過程に関する提案を行なった. 岩石の化学分析からはマグマの化学組成と山体の成長,カルデラの形成事件とが密接に関連しており,ア)10000〜7000年前,イ)4000〜2500年前,ウ)2500年前のカルデラ形成噴火,エ)2500〜1300年前,オ)1300〜850年前,カ)550年前〜西暦1983年,それぞれ特徴をもったマグマが噴出したことが明らかになった.この結果は,津久井ほか(2001)として発表された.キ)西暦2000年の噴火の噴出物はこれらとは異なり,新たなマグマ供給系に由来するらしい. 平成14年度は継続中の作業を進めるとともにこれらを総括して三宅島火山のマグマ,マグマ供給系の変遷とその機構を考察する.
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