Research Abstract |
本研究では,上部マントルに相当する圧力領域での鉱物のレオロジー特性を明らかにする事を目的とし,マルチアンビル型高圧発生装置と放射光及びCCDカメラシステムを併用した全く新しい変形実験技術の開発を行っている。本実験の原理は,高圧力容器中の高圧・高温・差応力状態にある試料の全景(歪状態)を,強力なX線を用いたラジオグラフィ法によって観察する事にある。 基本的な高圧セルの開発実験は,愛媛大学の高圧発生装置を用いて行い,放射光を用いた実験はSPring-8のBL04B1ビームラインに設置されているマルチアンビル型高圧発生装置(SPEED-1500)とCCDカメラシステムを用いて行った。実験にはTEL12mmのWC製第2段アンビルを使用し,San Carlosオリビン粉末の円柱形焼結体(直径1.2mm,長さ1.7mm)を試料に用いて実験を行った。 この研究の問題点は(1)マルチアンビル型高圧発生装置は試料を等方的に加圧する為に,この装置を用いて変形実験を行う為には,試料に高圧力がかかり,かつ,一軸性の圧縮応力を発生させるセルの開発が必要,(2)試料に高圧力がかかっている際には,第2段アンビル同士が非常に近接した状態となるが,この様な状態でも,アンビル間の空間を通してエックス線が試料に照射透過し,試料の全体像がCCDカメラシステムで撮影されるようなセルを開発しなければいけない事である。これまでの実験で,上記の2つの問題点を解決した高圧セルの開発に成功した。そのセルでは,約7GPaの圧力領域で,試料を約5%歪ませ,かつ,良質の画像データーを得る事とができる。また,得られた画像データの解析から,ガイドブロックの変位,アンビルギャップの変位,及び,試料の短量の比較によって,試料に発生している差応力値を求める得る事がわかった。 今後は,より大きな圧力のもとでの変形実験技術の追求と,試料の歪量をより大きくする高圧セルの開発を行う。
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