Research Abstract |
旧鉱山の露頭や廃石を中心にして,含ヒ素金属鉱物に関する調査をおこなった.静岡県河津鉱山では,ヒ素と同形置換をおこなうアンチモンならびにテルルの3種類の元素を含む四面銅鉱系鉱物を検討したところ,地表水による分解に際して,ヒ素やアンチモンはすぐ近くに固定されず,テルルがテルル酸あるいは亜テルル酸塩鉱物としてできることが判明した.おそらく,ヒ素やアンチモンは流体とともに遠くに運ばれていったものと思われる.岐阜県遠ケ根鉱山では,砒鉄鉱ならびに硫砒鉄鉱が未だたくさん廃石として放置されている.ここでは,ヒ素は,鉄のヒ酸塩鉱物,たとえばスコロド石,フィッリプスボーン石,セグニット石,砒藍鉄鉱などとして鉱石の表面やそれに接する土壌中に固定されている.ヒ素は鉄との相性が良く,鉄が近くに多量にあると,溶液中に出ることなく,容易に鉄のヒ酸塩鉱物ができるようである.福井県赤谷鉱山は,自然砒が産出する廃石が少し残されている.ここには,アンチモンの硫化物,輝安鉱も共存している.自然砒は分解が進んでいて,一部は亜砒酸,方砒素華,が生成している.uェ解している輝安鉱の周囲には黄鉄鉱からきた鉄との化合物,黄安華,ができていて,アンチモンとヒ素は別々の挙動をとっていることがわかる.佐賀県厳木鉱山は,マンガンを採掘していた所であるが,その鉱石中にヒ素を含む鉱物の存在が知られていた.現在残っている露頭の鉱石中には,淡緑色をした皮膜状の二次鉱物が見られる.これは,ニッケル華であることが判明した.この鉱物は,ニッケルの含水ヒ酸塩で,鉱石中に,紅砒ニッケル鉱などの存在が予想される.今後の調査で明らかにしたい.
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