2002 Fiscal Year Annual Research Report
動的な電子状態理論による電子・スピン移動反応の研究
Project/Area Number |
13640496
|
Research Institution | MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY |
Principal Investigator |
太田 勝久 室蘭工業大学, 工学部, 助教授 (50152129)
|
Keywords | 時間依存変分原理 / 不等式拘束条件 / 不対電子軌道 / UHF波動関数 / HOMO-LUMO / 電子移動 / Koopmans定理 |
Research Abstract |
多電子系における電子・スピン移動反応を解析するために,時間依存変分原理に基づいた動的な電子理論の構築を行なった。本申請課題研究では永らく静的な量子化学(定常状態変分理論)に蓄積されて来た波動関数(変分試行関数)構成のアイデアとノウハウを、動的な量子化学(時間依存変分理論)に拡張し、多電子移動反応に於いて有効な理論的手法の確立を目的としている。 特に、種々の化学・物理的環境下での多電子波動関数の時間発展を計算可能にするため、我々は等式拘束条件下での時間依存変分理論を開発してきた。本課題ではさらにそれを拡張し、一般的な物理量期待値の不等式拘束条件下での時間依存変分理論を構築した。すなわち、不等号が成立する部分関数空間を第I相、等号が成立する部分関数空間を第II相と定義する。全時間領域での作用は、各部分空間での作用の直和で定義される。さらに変分の可動端条件を加味して多電子トラジェクトリをWeierstrass-Erdmann接続条件で接続し、全時間領域に対する停留作用原理を定式化した。これによりエネルギーと運動量の連続性を保持した。 また、電子移動反応における多電子トラジェクトリ計算の初期多電子波束としてUHF波動関数がしばしば採用される。本研究では、この電子移動過程において主要な役割を果たすUHF波動関数における不対電子軌道の簡易同定法を開発した。すなわち、経験的にはα-HOMOが不対電子軌道になる場合が多いが、NH2ラヂカル分子ではβ-LUMOが不対電子軌道として同定されることが判っている。本研究では以上の事柄を凍結軌道近似により解析的に研究した。その結果、擬2重縮退系における3電子占有2重項状態においてはβ-LUMOが不対電子軌道として同定され、1電子占有2重項状態においてはα-HOMOが不対電子軌道として同定されることを一般的に示した。また、実際のab initio計算でもこれらのことを例証した。 さらに、初期多電子波束の不対電子軌道に関わるKoopmans定理の変分的意義を多電子系にも拡張できることを証明した。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Katsuhisa Ohta: "A handy way to find radical orbitals buried in UHF wavefunctions"THEOCHEM. 587. 33-41 (2002)
-
[Publications] Katsuhisa Ohta: "Hartree-Fock equation for hole states : Extension of the variational meaning of Koopmans' theorem to many-electron ionization"Internet Electronic Journal of Molecular Design. 2. 50-54 (2003)
-
[Publications] Katsuhisa Ohta: "Stability analysis of square-planar methane in excited states"THEOCHEM. (in press). (2003)